■喜びはもちろん、怒りや悲しみも助長する「ムードもりあげ楽団」

 14巻に登場する「ムードもりあげ楽団」は、さまざまな楽器を持った小さなロボットたちの楽団道具である。必要な場面で使用すると、そのシーンに合わせた音楽が流れ雰囲気を盛り上げてくれるのだ。

 のび太はこの道具を使い、ママのおやつを作る気力を引き出したり、楽しい音楽にあわせて行進し、友達に元気に挨拶したりする。しかし音楽の影響を受けすぎてしまい、パパの釣った魚がかわいそうだと泣いたり、いじめてくるジャイアンを勇ましい音楽とともにバットで殴り返したりするのだ。結局この話は「どうも きょくたんだなあ」というドラえもんのつぶやきで終わる。

 疲れたとき、好きな曲を聞くと元気になれる人もいるだろう。「ムードもりあげ楽団」はそのメカニズムを応用した道具とも言える。しかし怒りや悲しみもさらに助長させるケースもあるので、使うべきシーンには注意が必要だ。

■実はもっとも有能な音の道具!? 「音消しマイク」

『ドラえもんの歌』(藤子・F・不二雄大全集第1巻)に登場するのが、ジャイアンの迷惑な歌声を消す「音消しマイク」である。

 ある日自分の歌をみんなに聞かせようと、リサイタルを提案したジャイアン。そんなのは聞きたくないと戦々恐々とするのび太たちに、ドラえもんはマイクを通る音をすべて消す「音消しマイク」を出す。このマイクは歌っている本人には音が聞こえているものの、聞いている側には音がまったく聞こえないという便利な道具だ。

 個人的にはこの道具が一番ほしい。家族のいびきや犬の鳴き声によく悩まされているので、もしこれがあれば、いびきをかく人の口もとに置いたり、夜間に吠えてしまう犬のそばに設置することで、騒音問題が解決できそうだ。

 現実にはノイズキャンセリング機能付きのイヤホンも登場しているが、騒音そのものを消す道具というのはまだない。迷惑な音を消してくれるこの道具こそ、現代の必需品かもしれない。

 

『ドラえもん』に登場する、音にまつわる数々のひみつ道具たち。実際にどれか1つでも開発されれば、私たちの生活は大きく変化するだろう。

『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』は、藤子・F・不二雄さんの生誕90周年を記念した特別な映画でもある。視聴者をワクワクさせてくれるような、すばらしい音楽のひみつ道具の登場にも期待したい。

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