『機動武闘伝Gガンダム』が、今年30周年を迎える。『ガンダム』シリーズのなかでも飛びぬけて異端の存在である本作は、従来のガンダムの殻をぶち壊した革新的な作品であった。
ストーリー・キャラクター・登場する機体のすべてが斬新でファンの胸を熱くさせ、そして、現在でもなお愛され続ける作品となっている。そこで今回は、放送30周年を記念し、あらためて『Gガンダム』の魅力を紹介していく。
■アナザーガンダムは『Gガンダム』からはじまった
『Gガンダム』は、従来のガンダムの殻をぶち壊したまさに“異端のガンダム”であった。今でこそファンに愛される作品となっているが、放送当初は従来の『ガンダム』シリーズとの違いからオールドファンを中心に困惑する声も多かった。筆者は当時、子どもであったためそこまで抵抗感はなかったものの、たしかに「今までのガンダムとはなんか違う」ということを感じていたように思う。
このように出だしこそ振るわなかった『Gガンダム』だが、固定概念のない小学生を中心に人気が出はじめ、そして、作品自体の面白さから徐々にオールドファンたちも納得するものとなっていった。
この“異端のガンダム”を生み出したのは、富野由悠季氏に代わり監督を務めた今川泰宏氏だ。彼は派手で仰々しい演出をすることでも知られているが、アニメ『ミスター味っ子』の監督と聞けば『Gガンダム』がこのような作品になったことに納得する人も多いのではないだろうか。
今でこそ“アナザーガンダム”と呼ばれ、作品ごとに異なる世界観を持ち多様性を楽しむことができる『ガンダム』シリーズだが、そんな自由な形態をとれるようになったのも、この『Gガンダム』の存在が大きいだろう。
■癖の強いキャラと各国の特徴を出したガンダム
『Gガンダム』は、まずガンダムが戦っている舞台が大きく異なり、“ガンダムファイト”という格闘大会が舞台となっている。一応、大会優勝者の国が世界の覇権を握る“代理戦争”という意味合いはあるが、従来の戦争兵器としてのガンダムのイメージと大きく異なる。
MS(モビルスーツ)もMF(モビルファイター)と呼ばれ差別化されており、操縦もガンダムファイターと呼ばれるパイロットが、MFと連動するファイティングスーツを着ておこなう。つまり、パイロット自身も格闘の達人でなくてはならないのだ。
登場するキャラやガンダムも、それまでのシリーズとは大きく異なり、かなり癖が強い。本作の主人公は、ネオジャパン代表のガンダムファイターであるドモン・カッシュ。コロニー格闘技のチャンピオンで、生身の戦闘であれば歴代ぶっちぎりで最強の主人公だろう。
第1話「Gファイト開始! 地球に落ちたガンダム」では、四方から撃たれた銃弾の雨を全て素手でキャッチ。その後はモビルファイターの攻撃を生身で受け止め、さらには刀でぶった切るなどしている。
ぶっきらぼうだが根はやさしく熱血、まさに愛すべき“少年漫画の主人公”といったドモン。そんな彼は、ガンダムファイトを通じ数々の出会いと戦いから成長していく。そして、彼の乗るシャイニングガンダムは、ネオジャパン代表らしく日本の甲冑を彷彿とさせるガンダムで、必殺技“シャイニング・フィンガー”で掴んだものを粉砕する。ちなみに必殺技を出す際に叫ぶ「俺のこの手が光って唸る、お前を倒せと輝き叫ぶ」という、ドモンの決め台詞もめちゃめちゃ熱かった。
一方、ドモンの前に立ちふさがるライバルたちも個性豊かだ。そのなかでも最大のライバルとなるのは、前回大会の優勝者であるネオホンコン代表の東方不敗マスター・アジア。
作中屈指の人気キャラで、流派“東方不敗”という拳法の達人にしてドモンの師匠でもある。さすが師匠だけにドモン以上に人間離れした身体能力を持ち、そして、黒い悪魔・マスターガンダムに乗ればまさに鬼に金棒状態になる。物語では、人類の抹殺のためにデビルガンダムを復活させようとし、ドモンたちと幾度となく激しいバトルを繰り広げた。
ほかのライバルとガンダムも個性にあふれている。ボクシングのチャンピオンであるネオアメリカ代表チボデー・クロケットとボクサーのように戦うガンダムマックスター、少林寺拳法の使い手のネオチャイナ代表のサイ・サイシーと両腕が龍のドラゴンガンダム、名門貴族の若き当主であるネオフランス代表ジョルジュ・ド・サンドとナポレオンのような見た目のガンダムローズ、元宇宙海賊の頭目でネオロシア代表アルゴ・ガルスキーと囚人のような見た目のボルトガンダムなどなど……個人的には、ネオドイツ代表でゲルマン流忍術使いのシュバルツ・ブルーダーと無骨なデザインのガンダムシュピーゲルが好きだった。