1979年のテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の放送開始以来、現在までさまざまな作品が作られてきた『ガンダム』シリーズ。アムロ・レイ、シャア・アズナブルを筆頭に、これまで数多くの魅力的なキャラクターが登場し、彼らに設定されている誕生日にはSNSやアプリゲームなどで毎年イベントが行われ盛り上がりを見せるが、2月22日は『機動戦士Zガンダム』に登場したパプテマス・シロッコの命日にあたる。
同シリーズのファンの間では「最強のキャラクターは誰か」という話題がよくのぼるが、そうした中でシロッコは上位に名を連ねることが多い人物でもある。今回は、最期はカミーユ・ビダンが乗るZガンダムに突撃され命を落とした、「木星帰り」の若き天才であるパプテマス・シロッコについて、さまざまな視点からその強さを分析してみたい。
■エースパイロットでありながらモビルスーツを独自開発する天才
まずはパイロットとして、モビルスーツの開発者としてのシロッコを見ていきたい。
高いニュータイプの資質を持つシロッコは、パイロットとしてエース級の活躍を見せる。作中で印象深いのは、ハマーン・カーンが駆るキュベレイとの戦闘だろう。第46話「シロッコ立つ」にて、キュベレイが繰り出すファンネルを駆使したオールレンジ攻撃を、シロッコは完全に予測して撃ち落として見せたのだ。
『機動戦士ガンダム』の中でエルメスのビットが登場しているものの、ファンネルによる攻撃は、シリーズでは『Zガンダム』のこのシーンが初めて。シロッコが攻撃を予測できたのは、そのパイロット能力と高いニュータイプ能力の賜物だろう。シロッコはキュベレイ戦を被弾ゼロで乗り切り、『Zガンダム』の作中でシロッコが目立ったダメージを負ったのは、カミーユが乗るZガンダムのバイオセンサーによって操縦を奪われたときの一度のみだった。
またパイロットとしての才能だけでなく、シロッコのモビルスーツ開発者としての優秀さも見逃すことはできない。自らが搭乗した、メッサーラにジ・O。サラやレコアの機体であるパラス・アテネ、ボリノークサマーン。ガブスレイ、ハンブラビといったモビルスーツもシロッコの設計が基になっている。
中でも最後に登場するジ・Oは、ビームライフルとビームソードのみという極めて簡素な武装のモビルスーツだが、自身の圧倒的な能力に応えられる機体スペックがあれば武装の火力はそこまでいらないという、シロッコの自信を体現したようなモビルスーツだ。
さらにエピソードを付け加えておくと、ロボットアニメに登場するキャラクターの戦闘能力を測る上でバロメーターにもなっているゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズでは、凶悪な能力値を誇り、条件次第ではラスボス扱いの作品まである。
■優秀な指揮官、あっという間にのし上がった政治力、シロッコの目的とは?
シロッコは木星船団から地球圏に戻り、ティターンズに加わってから指揮能力の高さを発揮し、瞬く間にティターンズのNo.3までのし上がった人物だ。
パイロットとして、モビルスーツの開発者としてだけではなく、カリスマ性を持った指揮官としても優秀なのである。さらにティターンズでの実権を握りたいという、ある種の政治家としての一面も持ち合わせていた。
そんな類まれな才能を持った若き天才の目的とはなんだったのか? シロッコの思想についても触れておこう。
すごく簡単に言ってしまうと「重力に魂を引かれた人々の解放」と「女性が世界のトップに立つべきだ」というものがシロッコの思想である。
前者についてはシロッコ固有のものではなく、宇宙世紀を通して描かれているテーマのひとつなので今回は割愛させていただくが、後者については怪しいところがある。後述するがシロッコは「世界のトップに立つべき女性」すらも利用していた節があり、どのような思想を持って女性が世界を統べるべきだと思っていたかは分からない。
言動から直接的に世界を動かしたい、支配したいとは思っていないようではある。しかし、「常に世の中を動かしてきたのは一握りの天才だ!」という有名なセリフにも代表されるように、シロッコは傲慢さを持っていた。本当は女性を表に立てて、自分が世界を動かしたかったのかもしれない。