漫画やアニメには、目を開かずに敵と戦う「心眼を駆使するキャラ」が登場することがまれにある。一般的に人間が受け取る情報のうち8割は視覚からの情報だと言われているが、『座頭市』よろしく、目を閉じて相手の気配や状況を読み取る彼らは、なぜか決まって強者ぞろいだ。
そうしたキャラクターは、これまで数多くのバトル漫画の傑作を生み出してきた『週刊少年ジャンプ』の作品によく見られる。今回は1980年代から現代までの『ジャンプ』に登場してきた 「心眼を駆使する達人キャラ」を振り返りたい。
■『ジャンプ』漫画で多い「心眼使い」の最強キャラたち
個性的ではあるものの、「心眼使い」のキャラは意外と多い。たとえば、1985年より『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった車田正美氏の漫画『聖闘士星矢』のドラゴン紫龍は、目の前の敵に勝つために自ら両目を潰した。
白銀聖闘士のペルセウス座のアルゴルの、見たものを石に変えてしまう魔力に対峙した紫龍は、このときに自分の両目を突き刺す。この戦闘後に視力は回復しているが、その後クリュサオルのクリシュナと戦闘した際に、クリシュナの必殺技の光を受けたことで、視力を次第に失ってしまっている。
衝撃的なことではあるが、自分で自分の目を潰すキャラは少なくないようで、同じ例で、昨年9月に『ジャンプ』の連載開始から40周年を迎えた原哲夫氏・武論尊氏による漫画『北斗の拳』のシュウの姿を思い出すという人も多いだろう。南斗白鷺拳のシュウは幼い頃のケンシロウを救うため、自らの両目を犠牲にした。その顔は額からほほにまで達する傷跡が左右についており痛々しい。
心眼使いらしい「敵の動きを知るのは 目でもない耳でもない わたしは心で気配を見切る!!」というセリフを遺した彼は、その死の間際、奇跡的に視力が回復し、成長したケンシロウの姿を一目見たかったという願いが果たされた。
現代の『ジャンプ』作品でも、尾田栄一郎氏の漫画『ONE PIECE』に登場する藤虎もまた、「見たくねェもん」を多く見てきたことに絶望し、自分で視界を閉じたことが示唆されている達人キャラクターだ。
また、荒木飛呂彦氏の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第3部に登場したンドゥールも心眼使い。エジプトに上陸したジョースター一行の前に最初に立ちはだかったエジプト9栄神で、ゲブ神を司るンドゥールは、視力を持たない代わりに聴力と洞察力が異常に優れており、地面からの音や振動で対象の位置や距離などを探知することができる。
かなりの強敵だったので、イギーがいなければ一行は全滅していただろう。またその誇り高さも作中随一で、あの承太郎ですら彼には敬意を表し、杖を墓標代わりに埋葬してあげている。
このほか、冨樫義博氏の漫画『HUNTER×HUNTER』でキメラ=アント編に登場するコムギは作中では非戦闘員でありながら、その登場シーンは読者の心をつかんで離さない。
軍儀の世界チャンピオンである彼女は、キメラ=アント編のボスであるメルエムと軍儀を通して心の交流を重ね、ラストは少年漫画屈指の感動的な見開きで幕を閉じた。彼女こそ、心の目で真実を見ていた最強キャラと言えるだろう。
吾峠呼世晴氏の漫画『鬼滅の刃』に登場する岩柱・悲鳴嶼行冥も心優しき心眼使いだ。幼少時の高熱で失明したという彼は、それでも鬼殺隊最強だと言われており、鼻のきく炭治郎が「悲鳴嶼さんだけ匂いが全然違う」と語るほど。恵まれた肉体で戦斧に棘付きの鋼球を繋いだ鎖を武器として使っており、その擦過音をソナーとして使用していた。
この通り、心眼使いはバトル漫画の中でも特に『週刊少年ジャンプ』の漫画キャラに多い印象を受ける。また「目ではなく心でものを見る」ことから、優しい性格として描かれることが多いようだ。