■実はいい人で優秀なビルギット・ピリヨ

 最後は『機動戦士ガンダムF91』に登場するビルギット・ピリヨだ。シーブック・アノー、セシリー・フェアチャイルドとともにクロスボーンバンガードと戦うことになった、ヘビーガンのパイロットである。

 候補生とはいえ、ビルギットは地球連邦軍の正規パイロットとしてシーブックとともに戦闘に参加していたのだが、バグの波状攻撃に対応することができず、コックピットごと切り裂かれて死亡してしまう。

 シーブックと共に戦っていたので、存在感は薄くないのだが、主役であるシーブックと、ヒロインであるセシリーがどうしても目立ってしまうし、活躍したシーンも少なめ。彼が搭乗するヘビーガンも一般的な量産機のため、モブキャラほどではないが地味なキャラという印象は拭えない。そういった地味さと、バグによる衝撃的な死の陰に隠れてしまったのか、ビルギット自身について語られることは少ない。

 しかし、実戦経験の少ない候補生であるにもかかわらず、クロスボーンバンガードの精鋭部隊「黒の戦隊」に引けを取っていないため、パイロット能力は高いと推測される。

 また、子どもたちに辛らつな言葉をぶつけるなど、最初の印象は悪かったものの、囮役を買って出たり、戦うことよりも脱出を優先的に考えているところが垣間見えたりと、人間的にはいい人だったと思われるシーンが少なくない。

『機動戦士ガンダムF91』を注意深く見れば見るほど、その死が惜しい、再評価される人物である。

 いずれも、地味キャラではあるがその死が残念なキャラばかりである。「悲しいけどこれ、戦争なのよね」という名言が、別の意味で脳裏によぎってしまう。そんな好人物たちだった。

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