トーナメント戦は、バトル漫画の定番にして盛りあがる王道展開だ。『ドラゴンボール』(鳥山明氏)の“天下一武道会”を筆頭に、トーナメント戦で繰り広げられる名勝負は読者をワクワクさせてきた。
トーナメントでとくに楽しいのが勝敗予想だ。「こいつとこいつが勝って2回戦でぶつかる!」「このキャラは主人公と因縁があるから負けない」など、読者は思い思いに予想をする。読み通りの展開ももちろん面白いが、想像を超えた番狂わせに胸を躍らせるのもトーナメントの醍醐味だろう。
そこで今回は、トーナメント展開で大方の予想を覆して勝ち上がってみせた「番狂わせ」キャラを見てみよう。
■あんなに前フリされた克己を瞬殺!『グラップラー刃牙』烈海王
1991年から『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で連載が開始された、格闘バトル漫画の大御所『グラップラー刃牙』(板垣恵介氏)で人気の高い「最大トーナメント編」は、その名の通りトーナメント形式のバトル展開であり、32人+αの格闘家たちが地上最強を掛けて争った。
「最大トーナメント編」で思い出深いのが、中国拳法の達人、烈海王だ。なかでもトーナメント3回戦2試合目、烈と"空手界の最終兵器"こと愚地克己との戦いは鮮烈だった。
克己は最大トーナメントが始まる直前に、主人公・範馬刃牙のライバルとして鳴り物入りで登場したキャラだ。養父の愚地独歩に「俺より強い」とまで言わせ、試合でその実力を証明してきた。この時点での克己は、多くの読者が認める強キャラだったといえる。
だが、烈はそんな克己にたった一発の拳で勝利した。さらにトドメとばかりに言い放った「キサマ等のいる場所は既に―― 我々が2000年前に通過した場所だッッッ」の衝撃たるや。あんなに徹底された前フリも、中国拳法の歴史の前では無力ということなのか。
烈は続く準決勝でも、刃牙をギリギリまで追い詰める活躍を見せる。「刃牙」シリーズ屈指の人気を誇る烈の魅力は、読者の予想すら追いつかない強さにあるのだろう。
■主人公のライバルも最強闘士も退ける『ケンガンアシュラ』黒木玄斎
WEBコミックサイト『裏サンデー』(小学館)で人気を博した裏格闘技漫画『ケンガンアシュラ』(原作:サンドロビッチ・ヤバ子氏、作画:だろめおん氏)にも、トーナメント展開がある。その参加者のひとり、黒木玄斎は読者の想像をはるかに超える大暴れをした規格外の男だ。
沖縄空手の流れを汲む暗殺拳「怪腕流」の達人である黒木は、裏格闘技界トップの座を争う「拳願絶命トーナメント」に参戦する。トーナメントで大事なのは組み合わせだが、黒木の相手は"ある意味"とんでもない強敵揃いだった。
まず1回戦では主人公・十鬼蛇王馬との再戦をめざす悪友キャラ、理人。2回戦は王馬と浅からぬ因縁を持つライバル、桐生刹那。勝ち上がった準決勝では、裏格闘技界で157連勝無敗を誇る最強の男・加納アギト……と、黒木の相手は、いかにも主人公が戦いそうなキャラばかりだったのだ!
黒木は主人公の戦いを盛り上げるための“かませ犬”にされるのがせいぜいだろう……そう思った読者は多かったはずだ。
しかし、黒木は強かった。1回戦で理人をまったく寄せつけず完勝すると、2回戦でも刹那を撃破。準決勝ではアギトの必殺技を見切り、右手首を破壊するカウンターで勝利した。なんと敗北フラグをことごとくへし折り、決勝戦まで進んでしまったのである。
漫画のお約束を強さでねじ伏せる黒木の姿には、少しの困惑と大きな感動を覚えずにいられない。ちなみに気になる決勝戦の相手は主人公の王馬なのだが……結果がどうなったか、未読の方はぜひ自分の目で確かめてほしい。