■「最低のゲス」「悪の限界がない男」
最後は、最悪のクズともいえる敵キャラを紹介したい。それが第5部に登場したチョコラータだ。ギャング組織「パッショーネ」の切り札であるチョコラータは、元医師という肩書きの猟奇殺人者。医師時代には医療ミスで何人も患者を死に追いやり、健康な人間を病気と診断して手術をしたり、麻酔をわざと弱めて痛みを与えたりと、“イヤ~”なエピソードだらけ。
そんな異常者がスタンド能力を使ったらどうなるのか。悲劇でしかない……。彼のスタンド能力「グリーン・ディ」は食人カビを撒き散らすというもので、イタリア・ローマの街を地獄絵図にしてしまう。
これには主人公ジョルノ・ジョバァーナも、「罪悪感というブレーキがない、悪の限界がない男」とチョコラータのことを表現している。しかも雇い主である組織のボス・ディアボロもチョコラータについては、「最低のゲス」と話す。前述のマックイイーン同様に、ボスまでも認める「クズ」というわけだ。
そんな称号にふさわしく、チョコラータはジョルノとの戦いで卑怯な手しか使わない。騙し討ち、死んだフリと、何一つ誇れるような戦いではなかった。そのため、最後はジョルノに無駄無駄ラッシュを食らって、ゴミ収集車に放り込まれて死亡。後にも先にもここまでクズすぎるキャラはいないだろう。
作者の荒木飛呂彦氏は大のホラー映画・サスペンス好きを公言しており、2011年には独自の視点でホラー作品を語る新書『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』を刊行している。読者としては「お近づきになりたくない」イヤ~な敵たちだが、ここにこそ荒木作品ならではのこだわりが詰まっているのは言うまでもないだろう。