■誘拐から救出され滞在先のホテルで…加賀邦子
グラマーなメガネっ娘・加賀邦子が全裸姿で松田耕作に迫るシーンは、ドキドキあり、切なさありの印象的なシーンだった。
邦子は日刊エヴリースポーツの新人カメラマンで、松田に片想いをしている。マリリンと並ぶかそれ以上に自由奔放なキャラで、物語では恋敵である柔に対し、あの手この手を使って松田から遠ざけようと画策していた。
さらに、天然なのか危なっかしい場面も多く、バルセロナオリンピックで現地入りした際は人身売買を目的としたギャングにのこのこ付いて行き、誘拐監禁までされている。
コミックス27巻、その誘拐から松田によって救出された邦子。滞在先のホテルで2人きりになった彼女は一糸まとわぬ姿で松田に迫る。大胆すぎる邦子と松田の“行く末”を、固唾を呑んで見守った読者は多いだろう。
しかし「俺には……好きな人がいて……」と、完全にフラれてしまう邦子。直後泣きながら部屋を出て偶然柔に遭遇した彼女は、「もういい加減ちゃんとしなさいよ!!」「二人とも、好きならちゃんとしなさいよ!!」と、恋敵の背中を押すのであった。
物語では終始、平気で嘘をついたり邪魔を入れたりとトラブルメーカーだった邦子だが、このシーンでは彼女の意地や人間性をとことん感じられる。個人的に大好きな名シーンだ。
■風祭もその可愛さについつい…本阿弥さやか
最後は、柔の永遠のライバル・本阿弥さやかのドキドキシーンを紹介する。
さやかは高飛車なお嬢様でプライドが高く、決して弱い部分を他人に見せない。そんな彼女が一度だけ弱い部分を見せたシーンがあった。
バルセロナオリンピック出場を賭けた柔との代表戦、さやかはそれまでのスタイルを変え、蟻地獄のような寝技主体のスタイルで柔を苦しめた。しかしそれでも残り15秒時点でポイントリードされ、最後は真っ向勝負を挑み敗れる。
コミックス25巻、柔を破り祝賀パーティーをする予定だった会場にて、一人ドレス姿で立つさやか。そして、会場に到着した風祭進之介に背中を向け、涙を流すのだ。大胆不敵なお嬢様のまさかの姿に、多くの読者がギャップを感じキュンとしたことだろう。
ドキドキしたのは読者だけでない。さやかとの結婚を避けていたプレイボーイの風祭でさえ彼女の可愛さにドキドキし、思わず抱き寄せてキスをしていた。
さやかはプライドの高い高飛車なお嬢様である一方、“打倒猪熊柔”を掲げ、作中屈指の努力家でもあった。祝賀会場のシーンは、そんな彼女の集大成的なシーンだったと言える。
今回は『YAWARA!』で、子ども心にドキドキしたシーンを紹介してきた。今回は紹介しきれなかったが、本作はコミックス表紙や扉絵も素晴らしい。
作中、柔道着姿が多い柔だが、表紙や扉絵ではかわいらしい衣装を披露している。さらにアニメのオープニング・エンディングでは、永井真理子さんや今井美樹さんなど女性アーティストが歌う主題歌にあわせ、柔が登場。おしゃれなアニメーションも魅力的だった。
『YAWARA!』は、熱血柔道シーンの感動もさることながら、子ども心に女性の魅力が詰まったドキドキする作品であった。