今や若手俳優の登竜門にもなっている人気漫画や小説のメディアミックス作品。原作のイメージもあるため、漫画の実写化ではキャラクターの再現性や演技力が試されるが、俳優たちの中にはそれが高く評価されたことで、キャリアを花開かせていった人々もいる。
今回は、そんな実写化出演がターニングポイントになった俳優たちと出演作品を振り返ってみようと思う。
■「やりたくなかった」から一念発起した小栗旬さんの花沢類
11歳の時に児童劇団に入り、俳優への道を目指し始めた小栗旬さん。数々のエキストラを経験した後、15歳の時に藤沢とおるさんの漫画を原作としたフジテレビ系ドラマ『GTO』の吉川のぼる役で初めて地上波連ドラレギュラー出演を果たす。
『GTO』に登場するキャラはヤンキーや問題児が多いが、のぼるはおとなしくて気弱ないじめられっ子。いじめを苦に自殺未遂を図るまで追い詰められてしまうのぼるの心情を、小栗さんが初々しくも繊細に演じきった。
その後も舞台や連ドラへの出演を続けているが、ブレイクの契機となったのは22歳の時に出演した神尾葉子さんの漫画を実写化したドラマ『花より男子』(TBS系)の花沢類だろう。道明寺司を演じた松本潤さん、西門総二郎を演じた松田翔太さん、美作あきらを演じた阿部力さんと並ぶ、F4にふさわしい存在感を見せた小栗さんだが、実は2020年にトークバラエティ『人生最高レストラン』(TBS系)に出演した際には、「当初、花沢類役はやりたくなかった」と激白している。
自分のイメージと合わないこともそうだが、渋い役者を目指していたため、アイドル的人気になることへの懸念などもあったのだそう。しかし、『花男』読者でもある実姉から「花沢類はお前じゃない。絶対にありえない」とキツい否定を食らったことで一念発起。マイペースで独特の世界観を持つ、花沢類という難しい役柄を徹底的に作り込んだという。その結果、彼の演じた花沢類には視聴者からの称賛の声が集まり、一気に知名度が上がった。
■『ROOKIES』に『るろうに剣心』も!実写化常連俳優の佐藤健さん
佐藤健さんは2005年に芸能界入りし、2007年に『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)で主人公・野上良太郎を演じ、華々しい俳優キャリアをスタートさせた。
その後、特撮ファン以外では、『ROOKIES』の岡田優也、『ブラッディ・マンデイ』(ともにTBS系)の九条音弥、『メイちゃんの執事』(フジテレビ系)の柴田剣人といった数々の漫画実写作品に挑戦し人気度を高めていく。この時点で、キャリアの密度はかなり濃いと言えるだろう。
それまではサブキャラを演じることが多かったが、2012年に公開された和月伸宏さんの漫画を原作とした映画『るろうに剣心』で主人公・緋村剣心役を演じたことで、さらなるブレイクを果たす。
インタビューでは原作漫画のファンで、作品への思い入れがかなり強かったことを明かしている佐藤さん。その原作愛は役に反映され、剣心のイメージに寄せるために、原作のセリフや場面を振り返りながら常に剣心の気持ちにシンクロするよう努力を重ねたそうだ。
殺陣の技術もしかり。剣心の「飛天御剣流」は剣、踏み込み・先読みとすべてにおいてスピードが必要となる技で、実写化は不可能にさえ思えたが、厳しい練習を重ねた佐藤さんは素晴らしい剣技を見せている。