■『HUNTER×HUNTER』貧者の薔薇
兵器によって大きく物語が動いたシーンといったら、冨樫義博氏による『HUNTER×HUNTER』の「貧者の薔薇(ミニチュアローズ)」は外せない。
貧者の薔薇は小型の爆弾だが、爆発すると一瞬で周囲を吹き飛ばす威力を持っている。これが使用されたのは、「キメラ=アント編」のメルエム対ネテロの場面。メルエムとネテロは、どちらも世界最強クラスの強者である。彼らは念能力を使って激しいバトルを繰り広げたが、決着はこの兵器によるものであった。
貧者の薔薇の爆発は、ネテロの「百式観音」を受け続けてもほぼノーダメージであったメルエムを、瀕死の状態にまで追いやることとなる。その後ギリギリのところで護衛軍に助けられ、肉体を回復させて更なるパワーアップをしたメルエムだったが、貧者の薔薇の恐ろしさは破壊力だけではない。
貧者の薔薇は、爆発と同時に遅効性の毒をまき散らす性能も持っていた。その恐るべき威力によって、メルエムは作中でトップクラスの実力を持ちながら死亡することになるのだ。
これにより、国単位~国際的な対応が不可欠とされる危険生物「キメラ=アント」は殲滅され、世界的な被害が未然に防がれた。同時に、ハンター協会会長のネテロを失って次期会長の選出が必要となり、また波乱が起きることとなる。
念能力とは関係が薄い兵器・貧者の薔薇によって物語が大きく動いた、鮮烈で印象的なシーンだ。
能力や肉体同士の戦いがメインとなるジャンプ漫画で、兵器はその強さの引き立て役となることがほとんどである。それだけに、兵器が活躍するシーンはとても印象に残るものだ。しかしその一方、これだけ多くの被害を出すものが人間によって生み出されたことを思うと、その事実に恐ろしくなってしまう。