「好奇心」に「十七石」も…松本零士『銀河鉄道999』に登場する珍しい“意思を持つ星”の画像
銀河鉄道999 [Blu-ray](東映アニメーション・東映ビデオ)/(C)松本零士・東映アニメーション

 漫画家・松本零士さんの代表作である『銀河鉄道999』には、我々の常識では考えられない個性豊かな“惑星”が数多く登場する。なかにはなんと惑星そのものが意思を持ち、登場人物らに語り掛けてくることも。作中で主人公・星野鉄郎らとコンタクトをとった、世にも奇妙な惑星たちについて見ていこう。

■強すぎる“好奇心”は破滅の元? 「好奇心」

 “好奇心は猫を殺す”ということわざがあるが、我々人類は常にこの“好奇心”に突き動かされ、物事をより深く突き詰めることで進化を続けてきた。

 しかし、“好奇心”を持っているのは我々人間だけとは限らない。本作にはなんと、この“好奇心”ゆえに鉄郎らを捕らえ、あまりにも無茶な要望を突きつけた惑星が登場している。

「好奇心」という名前を付けられたこの惑星は、星そのものが意志を持っており、強烈な好奇心に突き動かされた結果、999号を捕縛してしまう。強制停車させられたため渋々惑星に降り立つ鉄郎たちだったが、好奇心は彼ら人間の姿に興味を抱き、姿形を眺め、その隅々までを観察し始める。

 そして、その要望は徐々にエスカレートしていき、ヒロイン・メーテルに向かって服を脱ぐよう命じるまでに。これは惑星・好奇心が持つ“人間に対する異常なまでの興味”からの要望だったのだが、惑星・好奇心はメーテルの“中身”をより深く覗くため、鉄郎たちに“メーテルを解体しろ”と、さらなる命令を下す。

 度を越した“好奇心”に唖然とする一同だったが、惑星・好奇心のとある“弱点”を突き、窮地を脱する。実はこの惑星は人間の“中身”を覗きたい衝動に駆られる一方で、自身の“中身”を決して見られたくない……という、なんともあべこべな感情を抱いていたのだ。いわば惑星の“羞恥心”を利用するため、鉄郎は惑星の地面……すなわち“皮”を切り裂き、その内部を覗き込むことで惑星・好奇心の脳波を止めることに成功した。

 決して見られたくなかった自身の“中身”を見られてしまった惑星・好奇心は、その後、あまりの恥ずかしさからなんと“自爆”することによって粉々になってしまう。その名の通り、危険すぎる“好奇心”によって最終的に身を滅ぼしてしまった、なんとも奇妙な惑星だ。

■惑星になってもなお消えぬ“コレクター魂”…「十七石」

 鉄郎らが訪れた惑星「十七石」は、球体の所々に巨大な“アナログ時計”が埋め込まれた独特な姿をしている。どの時計も古いゼンマイ仕掛けで、指し示している時間がバラバラなことから正確な時刻が分からなくなっており、必然的にこの星は時間にルーズなことでも有名だ。

 そんな惑星・十七石だが、なんともともとは惑星ではなく、時計を愛してやまないコレクターであったというのだから驚いてしまう。そして、この惑星はしっかりとした“意思”を持っており、惑星内にある大量の時計をこの星の機械化人に修理させる日々を送っていた。

 だが、機械化人たちの修理の腕前はいまいちだった。彼らは“アナログ時計”の仕組みを理解しておらず、どうしても完璧な修理ができないままでいたのだ。

 十七石はその際に出る部品やがらくたを集めた惑星中心部の空洞に、鉄郎とメーテルを呼び寄せる。その目的はずばり、二人に“惑星中の全時計を正しく修復させる”ことだった。要は、十七石は鉄郎とメーテルを監禁し、余った部品を使ってコレクションである時計の修理を強要しようとしたのである。

 まさかの事態に困惑する鉄郎たちだったが、メーテルは惑星と堂々と対話し、彼を説得しようと試みる。十七石の聞き分けが良かったこともあり、二人は無事解放され、脱出することに成功した。

 一時は強行的な手段に出ようとした惑星・十七石だったが、すべては愛する時計たちを正しく直してやりたいという、一途な想いによる行動だったのかもしれない。星になりながらも“コレクター魂”を捨てていない、どこか人間臭さの残った惑星だ。

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