■芽生えた復讐の目はやがてアースノイドの粛清へ…「シャア・アズナブル」
最後は『機動戦士ガンダム』より、“赤い彗星”の異名で知られるシャア・アズナブルを紹介しよう。
特徴的な仮面で素顔を隠し、ジオン軍のエースパイロットとして地球連邦軍と戦うシャア。その正体はジオン公国の前身、ジオン共和国の創設者であるジオン・ズム・ダイクンの嫡男、キャスバル・レム・ダイクンだった。
シャアが幼少のころ、ジオンは何者かに暗殺されてしまうのだが、彼はこれをのちにジオン公国の実権を握るザビ家によるものだと解釈し、ザビ家への復讐を誓う。その憎しみは深く、妹・アルテイシア(セイラ・マス)の制止には目もくれずにジオンの士官学校へ入学。そしてジオン軍の兵士として晴れて入隊を果たすのだ。
MS(モビルスーツ)の操縦技術はさることながら、狡猾な手口で多くの人々を蹴落としてきたシャアは、士官学校時代からの付き合いであるガルマ・ザビをついにその手にかける。司令官であるガルマを口車に乗せ前線へと引きずりだしたシャアは、戦況を広く見渡しガルマを敵艦の奇襲を受ける状況に陥れるのである。
もはや離脱不可能となったガルマに対して「君の生まれの不幸を呪うがいい」と冷笑し、まんまとガルマを戦死させることに成功したシャア。憎しみや怒りの表情を見せるでもなく、淡々とガルマを死へいざなうその立ち回りには戦慄を覚えたものである。
復讐心というのは、誰かがその感情を押し殺さない限り無限に連鎖してしまうものだろう。客観的に見れば、それが虚しく悲しい構図であることに気づき、折り合いを見つけて穏やかに収束することを願うばかりだ。
復讐に取りつかれたキャラを見る感情が、哀れみから共感に変わることのない日々をこれからも生きていきたいものである。