■ピアノでさらにダイナミックな演奏ができるように…『オルフェウスの窓』
『オルフェウスの窓』は、池田理代子さんによって描かれたドイツの音楽学校を背景に展開する青春群像劇である。
主人公のユリウス・レオンハルト・フォン・アーレンスマイヤは女性でありながら男性として育てられ、男装して男子校の音楽学校に入学している。彼女と親しくなるイザーク・ゴットヒルフ・ヴァイスハイトは、貧しいながらもピアノの才能を認められ、奨学生として同学校に入学していた。
ある日、怪我をしたイザークを家まで送るユリウス。そこでちょっとした言い争いになり、ユリウスは部屋にあったピアノを感情のまま弾こうとする。しかし鍵盤を押した瞬間、その重さに圧倒される。驚くユリウスにイザークは「指の訓練のためにハンマーを重くしてある…たぶんほかの人間の手ではみじかい練習曲ひとつひけないだろう」と言うのであった。
鍵盤を重くすることは可能なのか。調べてみたところ、現在でも調律で鍵盤を重くするのは可能だが、結果的に腱鞘炎になりやすいためおススメはできないとのこと。
ユリウスも「むちゃだ…い…いまに指をだめにする…」と言っており、この指摘は正しいと言える。厳しい芸術の世界においてはこのような工夫も必要なのかと、当時は逆に尊敬の念を抱いたものである。
現実社会では考えられないほどに厳しい、漫画に出てくる技術を高めるための方法や道具。今、読み直すとびっくりしてしまうが、これらが登場した昭和の時代は“根性論”が強かったので、こうしたトレーニング方法は読者から応援されることも多かった。
当時、漫画のキャラに憧れて真似をしてみた人もいるかもしれないが、これらの方法は体を痛めてしまう可能性があるのでくれぐれもご注意を。