■『盾の勇者の成り上がり』の「盾スキル」
主人公の尚文が、盾の勇者として異世界に召喚されるところから始まる『盾の勇者の成り上がり』の盾スキルも、弱そうな「外れスキル」である。
盾スキルは前述のスキルとは違い、戦闘向けではあるものの、同時に召喚された勇者は剣の勇者、弓の勇者、槍の勇者と、スタンダードな武器の勇者であった。彼らと比較すると、攻撃に不向きな盾は「外れ」といえるだろう。
実際に物語序盤は、盾以外の武器を装備できず、素手での攻撃力も上げてはいけないという制約があるため、他の勇者よりも大幅に劣る描写がされていた。
しかし物語が進むにつれ、尚文は勇者が使える「カースシリーズ」という能力に目覚め、能動的な攻撃が可能となった。これにより防御力最強に加え、攻撃力も得ることとなり、勇者の中でも抜きんでた強さとなる。
とはいえ、尚文の真の強さはスキルによるものではなく、異世界を現実として受け止め、パーティーメンバーの強化を重視する、その判断力や明晰さ。これらがあったからこそ、彼は自身の強みを最大限に活かすことができたのだろう。
■『転生したらスライムだった件』他の「捕食系スキル」
捕食系スキルは、異世界ファンタジーに登場するスキルの中でも、類似のものが多くの作品で登場する。その点では、定番中の定番の「実は強すぎる外れスキル」といってもいいかもしれない。
名前だけで考えると、ただ単に大食らいなだけで、他のスキルに比べると役に立たないというイメージがわく。しかし、異世界ファンタジーにおける捕食系スキルの本質は「吸収」である。
たとえば、『転生したらスライムだった件』の場合だ。主人公のリムルはスライムとして異世界転生をするが、その際「捕食者」を初期スキルのひとつとして手に入れる。「捕食者」は、体内に取り込んだものや相手を栄養にしたり、解析したりできるというものだ。そのうえ解析することで相手のスキルを自分のものにすることも可能である。
これによりリムルは、さまざまなスキルを加速度的に覚えていくことに。強いスキルを次々と吸収し、あっという間に強くなっていく姿は、転生当初スライムだったキャラだとはとても思えない。
今回紹介したスキルはいずれも、およそ戦闘向けではなさそうであるが、さまざまな付随効果により最強となったものだ。その経緯も多種多様でバラエティに富んでいて面白い。
とはいえ、二刀流による乱れ切りや、魔法による高威力広範囲攻撃もまた王道の良さがある。スキルに注目しながら作品を観てみるのもまた面白いかもしれない。