寒い季節になると「人肌が恋しくなる」というセリフを見聞きする。相手が恋人でなくても、幼い頃親などから抱きしめられたり、ペットを抱いてほっこりしたりした記憶がある人もいるだろう。
昔の少女漫画には、雪山などでヒロインが遭難し、その体を温めてくれるプリンスが登場するシーンも多い。そのような場面は少女漫画の中でも強烈なインパクトを残し、読者をドキドキさせてくれるのだ。今回はそんな萌えシーンの代表である、カップルが体を温めあう場面が出てくる少女漫画を紹介しよう。
■雨に打たれこのままでは風邪をひく…『エースをねらえ!』
『エースをねらえ!』は、山本鈴美香氏による昭和を代表するテニス漫画だ。主人公の高校生岡ひろみが、名コーチ宗方仁にテニスの才能を見いだされ、激しい特訓を積み一流のテニスプレイヤーに成長していく姿が描かれている。
そんなひろみは、テニス部の先輩である藤堂貴之に想いを寄せていた。テニスを通し、お互いに気持ちを寄せあう2人。しかし宗方は、彼らの交際をテニスに対する士気を下げるものとして懸念していた。
ある日、テニス合宿でランニングをしていた2人は雨に降られる。汗をかいたあとなので風邪をひかないよう、藤堂はとっさにひろみの手を取り洞窟で雨宿りをすることに。徐々に激しくなる雨風に、冷えていく体。「さむい!」「このままではかぜをひく」「どうする…」2人は混乱しつつも自然とお互いに体を抱き寄せ、温めあうのであった。
抱きしめられている間も、ひろみの頭からは「恋をしてもおぼれるな」という宗方のセリフが離れない。大好きな藤堂に抱きしめられうれしいはずが、恋をするなという宗方の指示を思い出し素直に喜べないのが歯がゆい。昔は少女漫画に限らず、恋愛は目標の妨げになるといった指導者の考えも多かったのだ。
しかし好きな人を目の前にしたこのシチュエーション、もはや抱き合う以外の選択はないかもしれない……!?
■急速に2人の仲が接近する展開にドキドキ!『ガラスの仮面』
美内すずえ氏による演劇を舞台にした名作『ガラスの仮面』は、主人公の北島マヤと、彼女の成長を見つめる速水真澄との関係も注目される作品だ。“大都芸能”の社長である真澄は、当初マヤのことを仕事のために利用する立場だったが、徐々に彼女に惹かれていく。また最初は真澄を恨んでいたマヤも、度重なるサポートを受けて彼が気になるようになっていった。
ある日マヤは目標とする『紅天女』の舞台のモデルとなった地で、雨が降ってもなかなか帰って来なかった。それを知った真澄も現地に向かい、ずぶ濡れになったマヤを見つける。
その後2人は豪雨の中神社で雨宿りし、その場で一夜を明かすことに。マヤは濡れた洋服を乾かすため真澄のコート1枚になるが、やがてストーブの薪も切れ、寒さに震える。真澄が冗談半分で「おれのそばにくるか?」と言ったとことろ、マヤは素直に従い、真澄の腕の中で寄り添って夜を過ごすのであった。
この場面は、マヤが真澄のことを初めて好きだと認めたシーンであり、これまでの彼への憎悪やわだかまりが溶けた決定的な瞬間であった。またいつもはクールな真澄も「おれも男だからな 責任がもてなくなるかもしれんぞ」と言い、ワイルドな男に変身する様子を見せて読者をドキドキさせた。
この体を温めあう場面は、数あるガラスの仮面の名シーンの中でも、最高に読者を胸キュンさせてくれた伝説のシーンである。