『北斗の拳』ユリアにマミヤ、愛ゆえに自らを差し出す…女性キャラが見せた「それぞれの覚悟」の画像
ゼノンコミックスDX『北斗の拳【究極版】』1巻(徳間書店)

 2023年9月で『週刊少年ジャンプ』での連載開始から40年を迎えた漫画『北斗の拳』。

 199X年の荒廃した世界を舞台にした『北斗の拳』では、男たちの迫力あるバトルが見どころだが、その一方で戦いを見守ってきた女性キャラたちも欠かせない存在。原哲夫氏の描く女性キャラは美しく儚く、そして戦う男たちと同じく強い覚悟のもと命を賭けてきた。

 戦いにはほとんど参加することはない彼女たちだが、その精神の強さは男たちに微塵も負けてはいない。そこで今回は、40周年を記念して新作アニメ『北斗の拳-FIST OF THE NORTH STAR-』の制作を発表されるなど、今も世界中にファンが多いバトル漫画『北斗の拳』を振り返り、男たちがビビった女性たちの覚悟のシーンを紹介したい。

■「わたしも天に帰りましょう」

 愛を貫くために、自らを差し出す覚悟を見せる『北斗の拳』の女性キャラ。その代表格はメインヒロインのユリアだろう。ユリアはケンシロウの恋人として、世界が核戦争で荒廃した後も一緒に道を歩んでいこうと心に決めた女性だ。

 しかし、恋敵シンの登場によって二人の仲は引き裂かれ、ケンシロウは北斗神拳伝承者として覚醒することになる。同作におけるユリアは特別な存在で、彼女を愛するのはケンシロウやシンだけではなく、あのラオウまでもが手に入れたいと本気で考えた。

 ユリアのどこにそこまでの魅力があるのか、それはやはりいつでも死ぬ覚悟があることが第一に挙げられる。幼少期から、相手が誰であれ怯むことなくはっきりと自分の意思を貫き通す彼女が、男たちにとって憧れの存在として映ったのだろう。

 悪鬼といわれ誰も手がつけられなかった山のフドウに、命の尊さを教えたエピソードはかなり印象深い。そして、シンに連れ去られたときには、ユリアのために愛を語り装飾品を与えるシンに決してなびくことはなく、サザンクロスの城から飛び降りまで図った。

 下にフドウたち南斗五車星が構えていたため未遂で終わったが、迷わず飛び降りる凄まじい覚悟……。そしてそれだけには留まらず、ケンシロウとの戦いを前に「愛を知るため」ユリアを殺そうとしたラオウに対しても、彼女は表情ひとつ変えず「峻烈な男たちの戦いのためにわたしがしてあげられるのは 心置きなく送り出すことだけ」と自らの体を差し出した。そして「わたしに見つめられていては突きにくいでしょう わたしも天に帰りましょう」とラオウに背中を向け拳を受ける覚悟を見せたのだった。これは自らの死期が近いことを見越しての言葉でもあるが、その姿に一片の迷いはない。

 これほどまでに、自らの使命や愛のために何度も命を投げ出すことを繰り返したのはユリアだけだ。しかも多くを語らないところが良い。誰もが仕草や行動で自然とユリアに惹かれているのがよく分かる。

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