■ハードモード転生は断る余地がほしい…! 『転生したらスライムだった件』の三上悟

 最後に紹介するのは、広くその名を知られる人気作品『転生したらスライムだった件』のリムルだ。転生前の彼は三上悟という名の37歳独身男性である。会社の後輩が社内のマドンナと婚約した一方で、本人には彼女ができる気配すらなし。とはいっても、それなりに満足な人生を送っていた(少々こじらせているところはあるが……)。

 彼はとても良いヤツだ。結婚目前の幸せ絶頂な後輩を、体をはって助けたのだから。それも包丁を手にして突っ込んできた通り魔から。おまけに最期に望んだことは、“個人所有のPCのデータを消してほしい”というささやかな願いだった。“オタクあるある”発動である。後輩に対し、中を見ずデータを破壊するよう要求する姿には、思わず共感した人も多いのではないだろうか。

 そんな彼を一番気の毒だと思った瞬間、それは異世界に転生した直後だ。何も見えず、聞こえず、一生懸命状況を把握してみれば、手も足も口もない。なんと彼が転生したのは人間でや動物ですらなく、まん丸ボディのスライムだったのだ。

 よくよく考えなくても、触覚はあるが視覚がないなんて恐怖だと思う。「アホか!認められるかぁー!!」と三上が叫んだのも無理もない。しかも声が出せないから心の中の絶叫だったというのが涙を誘う。

 このナイナイづくしなまん丸ボディがどう変わっていくのか、その成長から目が離せない作品だ。
まとめ

 異世界作品は総じて人生逆転的な話が多い。だからこそ、本格的にストーリーが始まるまでの主人公の人生は、惨憺たるものになりがちだ。

 確かにそんな主人公が能力を手にし、強くなって幸せになっていく姿にはワクワクするし、スカッともする。だが、筆者はたまに思うのだ。作者様、主人公に対してもう少し手加減してあげてください、と。

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