■今も息づく日本古来の宗教観
現代では、日本は世界有数の無宗教国だと言われている。しかし、日本の宗教観の原点であるとされるアニミズム思想(万物に魂が宿っているという考え方)は、あらゆるところに息づいているように思う。
たとえば、日本を代表する産業となったアニメーションがその一つだ。生命のない二次元のキャラクターに魂を吹き込み、生きている人間と同じように共感して心を動かすのは、アニミズム的な価値観ならではだろう。実際、アニメの語源はラテン語で魂や命を意味する「アニマ」であり、アニミズムの語源でもある。
時代や価値観が変わっても、変わらず日本人に受け継がれてきた宗教観。ゴジラはこの感性と絶妙にマッチしている。世界中にゴジラファンはいるが、やはりとりわけ日本人にとって、ゴジラは特別な存在ではないかと思う。
劇場では引き続き『ゴジラー1.0』が公開中だ。ゴジラの迫力自体も楽しめるが、“戦争と復興”という世界共通のテーマや、いたずらに自己犠牲を美化しない描き方は、国や世代を超えて共感できるものだろう。新しい時代の視点から描いた日本人の原風景を、ぜひ堪能してもらいたいところだ。