■牌をすべて網膜に焼き付ける特異体質…神保の「神の目」
哲也が宿命のライバル・ドサ健と全面戦争をくり広げる「新宿・上野玄人大戦編」。原作でもとくに人気の高いエピソードだが、そのなかでも屈指の名勝負が上野四天王最後の1人・神保公房との激闘である。
一見ヨボヨボのおじいさんにしか見えない神保だが、神業のごとき早アガリでかつては哲也の師匠・房州と渡りあったほどの強者だ。その正体は「神の目」と評される特異体質の持ち主だった。
牌を山に積む一瞬の光景を画像として網膜に焼きつけ、牌の位置を完全に覚える。これは「画像記憶」あるいは「映像記憶」といった名称で実在する能力であり、神保はこれを活用して早アガリを連発するのだ。
哲也は「神の目」ですら捉えられないスピードで牌山を積んで対抗するも、神保は長年の経験で培った推理力「第三の目」で見えない部分をカバー。能力に頼りきらず、雀士としても確かな実力を発揮した神保は『哲也』で指折りの強敵といえるだろう。
『哲也』には、ほかにも再現不可能な超人技が登場する。不自然だらけの動きで逆にサインを読ませない「七色ローズ」や、ほかの3人に自分の好きな牌を積み込ませる「元禄積み」など、マネする気すら起きない驚異のイカサマは数知れない。
少年誌なのに麻雀漫画ということ自体、ケレン味たっぷりなのに、能力バトル顔負けの異能力がガンガン現れ、最後は哲也が勝つ。青年向けである「麻雀」をテーマに、まるで少年漫画のような熱い王道展開を描ききったのが『哲也』の魅力ではないだろうか。