印南の「ガン牌」や神保の「神の目」…『哲也ー雀聖と呼ばれた男ー』で登場した驚異の超人技の画像
週刊少年マガジンコミックス『哲也~雀聖と呼ばれた男~』第1巻(講談社)

 戦後の混乱期を麻雀の腕で凌ぐ「玄人(バイニン)」たちの熱い闘牌バトルで人気を博した『哲也ー雀聖と呼ばれた男ー』(原案:さいふうめいさん、漫画:星野泰視さん)。

 本作を語るうえで忘れてはいけないのが、玄人が使うイカサマ技だ。主人公・哲也の「ツバメ返し」や「大三元爆弾」など、一瞬の隙を突く華麗なテクニックの数々。筆者は親が持っていた麻雀牌を借りてよくマネをしたものだ。同じ経験のある読者もいるのではないだろうか。

 しかし、本作にはどんなにカッコよくてもマネをする気すら起きないスゴ技を駆使する玄人が何人もいた。今回は、超人じみた技で哲也を苦しめた玄人たちを見ていこう。

■牌についた指紋を識別…印南の「ガン牌」

 まずは、第3巻で哲也と死闘をくり広げたライバルにして戦友でもある印南善一だ。

 彼の超人技は「ガン牌」と呼ばれるイカサマで、牌の背中に目印を着けることでどれがどの牌かをカンニングするもの。印南の恐ろしさは全136牌を完璧に見分ける観察眼にあり、牌に着けた指紋をもとに「ガン牌」を成立させた。

 136パターンの指紋を見分けるのもスゴいが、そもそも指紋の違いを見抜く視力も相当である。

 印南の「ガン牌」はサブタイトルで「死神」「魔眼」などと称えられ、哲也をあと一歩まで追い詰めた。だが、最後はすべてを見通せるからこその油断を突いた哲也のイカサマに破れ、印南は雪が降りしきる夜の闇へ消えていった。

 ちなみに本エピソードでは最後に、“指紋で牌に目印を着けても、他人の指紋がすぐに着いて見分けられなくなる”という矛盾が判明。印南は本当に指紋で「ガン牌」していたのか、違う方法を使ったのか……真相は闇の中である。

■哲也が2度も負けた雀士…ブー大九郎の記憶力

 第7巻からスタートした「大阪編」で、哲也はかつてない強敵と出会う。モグリの医者として生計を立てる目の不自由な玄人、ブー大九郎だ。哲也のモデルとなった実在の小説家、阿佐田哲也さんの作品でも同名の雀士が登場するが『哲也』でも大きな壁となって哲也の前に立ちはだかった。

 ブー大九郎の得意技は超感覚と記憶力だ。牌山を積む際にすべての牌を指で撫でて見分けておき、音でどの牌がどこに積まれたかを把握する。そのすべてを記憶し、最短ルートでアガるのが彼のスタイルだ。

 常人離れした麻雀に哲也は大苦戦。ブー大九郎に2度も敗北し、3度目は不合理な打牌でブー大九郎の計算を狂わせる奇策でかろうじて勝利をもぎとる。対戦後、疲弊しきった哲也は「すげえ玄人だった……」と、ブー大九郎を手放しに称賛したほどだ。

 互いの金を奪いあう玄人だが、戦いを通して尊敬の念が生まれることもある。ブー大九郎は哲也にとってそれほど高く、敬意を表す壁だった。

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