■リアクションのインパクト大な健康イタリア料理…『ジョジョの奇妙な冒険』
1987年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載が始まった荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』は、今もなお掲載誌を変え新たな物語が描かれ続けている大人気漫画作品だ。
特殊能力・“スタンド”による頭脳戦が醍醐味となっている本作だが、第4部にて“料理”を主軸に据えた少し意外なエピソードが描かれている。
第4部の主人公・東方仗助は仲間である虹村億泰とともに、イタリア人のトニオ・トラサルディーが個人経営している小さな“イタリア料理店”に足を向ける。そして、この料理店で差し出される品を口にするたび、必ず“奇妙”な現象が巻き起こっていく。
水を飲めば滝のような“涙”を流し寝不足が解消、前菜を食べれば肩から垢がごっそり削り落ち肩こりが治る……壮絶な現象こそ起こるものの、必ずなにかしらの肉体不調が治癒する奇怪極まりない料理の数々に、仗助らも困惑せざるをえない。
さすがにおかしいと感じ厨房に乗り込んだ仗助だったが、味の虜になってしまった億泰が次の一品である「小羊背肉のリンゴソースかけ」を食してしまう。
小羊肉の油と絶妙にマッチする甘酸っぱいソースに感涙する億泰だが、料理を堪能する彼の腹部が突如として破裂し、腸が飛び出す大惨事に……。いよいよ“攻撃”か、と身構える仗助らだったが、なんとこれすらトニオの料理がもたらす、不思議な健康効果の予兆にしか過ぎない。
彼の料理はすべてスタンド「パール・ジャム」が潜んでおり、このスタンド能力によって肉体に急激な変化をもたらし、食した者を健康体に変えていたのだ。一時は大出血していたはずの億泰だが、すぐに腹部の傷も消え去り、下し気味だった腹が治ったことに喜びの声を上げていた。
インパクト大な現象にこそ驚かされてしまうが、最後は食した人間を健康体へと変えてくれる、“奇妙”極まりない料理である。
漫画では打ちのめされた主人公が“超回復”するのも醍醐味の一つだが、我々の日常にあるような食材・料理で復活する場面も珍しいのではないだろうか。満身創痍から復活する主人公の姿のみならず、登場した料理の味を想像してみるのも面白いかもしれない。