■暗雲立ち込める秦国に瞬いた稲妻「包雷」

 政が秦の大王となる儀式「加冠の儀」を狙って、呂不韋が裏で手を引く毐国軍が咸陽へ向けて侵攻する。戎翟公(じゅうてきこう)率いる反乱軍が城内になだれ込むのを防ぐため、ギリギリの防衛戦を強いられる鎮圧部隊。ついに河了貂にまでその刃が届きそうになった絶望の瞬間、呂不韋勢力から離反した昌平君とその一団が到着するのである。

 参戦直後に部隊を右に分け、続いて城内から昌平君直下の騎馬隊が参戦することで、敵軍を挟み込むように兵士の壁を作りあげる。昌平君とは反対側で戦っていた河了貂がすぐにその意図を汲み、左右の壁と接するように同じく兵士の壁を作りあげることで、「包雷」の陣が完成するのである。

「包雷」は標的を「コ」の字型に囲むように兵士で壁を作ることで敵の退路を断ち、中央の部隊で一瞬の内に決着を付けることを目的とした電光石火の戦術だ。壁となっている兵士の負担が大きい上、中央の部隊に確かな武力が求められる高等戦術である。

 戎翟公の姿をその目にとらえた昌平君は、武器を持つ腕から真っ先に切り落とし、そのままあっさりと戎翟公の命を刈り取るのであった。

 知も武も兼ね備えた昌平君が、まさに稲妻のごとく一瞬で国難を救った、シンプルながらもシビれる戦術である。

 

『キングダム』では今回紹介した以外にもさまざまな戦術が用いられ、そのどれもが圧巻の名場面へと繋がっている。放送目前のアニメ新シーズンや実写映画の続編において、戦術を用いるシーンがどのように描かれるのか、迫力の映像にも大いに期待が膨らむばかりだ。

  1. 1
  2. 2