■社員から恨まれ続けた社長が…『ゲゲゲの鬼太郎(6期)』7話「幽霊列車」

 最後に、第6期『ゲゲゲの鬼太郎』からもトラウマ回を紹介する。第6期は2018年から放送ということもあり、インターネットやSNSなどの要素も取り入れた最新の鬼太郎シリーズだ。現代の重苦しい世相やそこで生まれた人間の心の闇を積極的に描いており、作品としても非常に評価が高かった。

 トラウマ回として紹介するのは第7話「幽霊列車」、現代の社会問題の1つである、劣悪な条件で従業員を酷使する企業がテーマとなった話だ。

 終電を逃したとある会社の社長が、今日だけの臨時列車“0:42発の多魔霊園行き”という怪しい列車に乗ってしまう。その社長はパワハラやいじめを繰り返し、なかにはそれを苦にみずから命を絶った社員もいたという。臨時列車は、そんな社長を恨んで死んでいった人たちが地獄から迎えにきた幽霊列車だった。

 そのことに気づき列車から必死に降りようとする社長だったが、すでに手遅れ。本人は気づいていないが数日前に駅のホームから突き落とされ、彼もすでに死人だったのだ。

 最後は、亡者に体を抑えられ「助けてくれ」と懇願する社長に対し、「あなたはそういう人たちを助けたことがありましたか?」と鬼太郎が言い捨てて終わる。人が人をいじめて死に追いやり、恨みを買ってその人も地獄へ連れていかれるという因果応報の話で、非常に考えさせられる内容だろう。

 

 今回は、水木しげるさんの過去のアニメから、とくに怖くて子どもたちに衝撃を与えたエピソードを3つ紹介してきた。いずれのエピソードもアニメらしからぬバッドエンドで、見終わったあとにズッシリと心に来るものがあった。

 水木アニメは怖いエピソードが多く、なかにはトラウマ回と取り沙汰されるものもあるが、それは人間や社会の本質に迫るものがあるからこそなのかもしれない。

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