『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』大ヒット! 水木しげるアニメで描かれた子どもたちに衝撃を与えた“トラウマ回”を振り返るの画像
映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』ビジュアル

 2023年11月17日より全国公開された水木しげる生誕100年記念作品『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、口コミを中心にじわじわと人気が広がり、興行収入16億円、観客動員数は114万人と、大ヒットとなっている(2023年12月25日時点)。

 人気の秘密は、鬼太郎誕生の秘密に迫る感動のストーリーとアニメ独特の“怖さ”。そう、水木しげる作品は本来非常に怖いのだ。そこで今回は、歴代の水木しげるさんのアニメのなかから、子どもたちに衝撃を与えたトラウマ回3つを紹介する。

■子どもたちが白骨化!? 『ゲゲゲの鬼太郎(2期)』第38話「隠れ里の死神」

 1971年に放送開始された第2期『ゲゲゲの鬼太郎』は、初の鬼太郎カラー化アニメであり、社会風刺や人間の業の深さなども積極的に描き、そのメッセージ性の強さからトラウマ回が多いシリーズとしても知られている。

 第38話「隠れ里の死神」では、“かくれ座頭”という妖怪に連れ去られた子どもたちを助けるために“隠れ里”に救出に向かった鬼太郎。そこには、連れ去られ数百年も家に帰ることができない何人もの子どもたちがいた。

 実は、隠れ里とは時間の概念がないユートピアで、一面に咲く色鮮やかな花は一生枯れることがなく、ここにいる子どもたちも一生年を取ることがない。そして、ここの主であるかくれ座頭は、子どもたちは天国のようなこの場所で暮らしたほうが幸せだと主張する。もちろん、子どもたちを元の世界に連れて帰ろうとする鬼太郎とは対立し戦うことに……。

 鬼太郎は念力を使うかくれ座頭に苦戦するも見事倒し、子どもたちと一緒に元の世界へ帰る。しかし、隠れ里で過ごした数百年分の歳月が一気に押し寄せ、子どもたちは一瞬で白骨化して死んでしまうという超バッドエンドな展開に……。

 さすがの鬼太郎もこのときは「僕は助けないほうがよかったのかもしれない」と後悔し、「人が死ぬのは悲しいことじゃが かと言って何百年も生き続けたとしたらもっと悲しいことに違いない」という目玉おやじの言葉だけがせめてもの慰めとなった、非常にやるせない回だった。

■恐怖の水神様と軽薄な鬼太郎…『墓場鬼太郎』第6話「水神様」

 次は、2008年放送の『墓場鬼太郎』から。本作は少年誌で連載される前の貸本版の鬼太郎を強く意識したもので、深夜アニメ枠『ノイタミナ』で放送されたこともあり、子どもばかりではなく大人にとっても怖いシリーズだ。

 とくに筆者が怖いと感じたエピソードは、第6話「水神様」。

 金を稼ぐため借金の取り立て役として働き出した鬼太郎は、“水神様”と呼ばれる水の神のもとへ向かう。このシリーズの鬼太郎は一風変わっていて、水神様の祠にマッチを投げ入れたり痺れ粉を巻いたりと無茶苦茶やっている。挙句の果てには、借金のカタに水神様本体である水をビニール袋に詰めて持ち帰ろうとするのだから驚きだ。

 さすがの水神様もこれには激怒し、山から街に下りてきて鬼太郎を探し始めた。途中、水神様は人間を飲み込み溶かしていき、ついには洪水となり鬼太郎が住む家まで押し寄せてくるのだった。

 とにかく、水神様の能力と執拗さが恐ろしい回だった。しかし、それ以上にこの話数で衝撃的だったのが鬼太郎の行動だろう。水神様が家まで押し寄せてきて慌てて二階へ駆け上がる鬼太郎だが、このとき同居する水木を「じゃあ」の一言であっさり見捨てている。

 水木は鬼太郎が墓場から出てきたばかりの赤ん坊のときから面倒を見てきてくれた恩人だったのに……。ちなみに水木は一応生死不明となっているが、これ以降回想以外では登場していない。

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