『北斗の拳』(原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏)の序盤に登場する、KINGことシンの配下で幹部には有名なハートがいる。巨漢で普段は温厚なのだが、自分の血を見ると暴力的になり、我を失って周囲を傷つける男だ。
数々のサイトでも「ハート様」とネタになっており、もしかしたらシンより人気があるかもしれない(!?)。しかし、インパクトが強いハートだけではなく、実はスペード、ダイヤ、クラブとトランプになぞった残忍な幹部はほかにもいた。彼らはケンシロウの強さを引き立てるために登場したので、ほとんど覚えていない読者もいるかもしれない。
そこで、そんな影の薄いトランプ三人衆を振り返ってみたい。
■種モミを生で食べようと…!? ミスミじいさんより知名度は低いが迫力満点のスペード
まずは「怒り天を衝く時!の巻」「秘拳! 残悔拳の巻」の回に登場したスペードだ。モヒカン頭のスペードは「今日より明日なんじゃ」の名言を生んだミスミじいさんを襲った極悪人だ。
ミスミじいさんは“種モミが実ったら分けてあげよう”と提案するのだが、スペードは「なおさら種モミを食いたくなったぜ」と言い、ボウガンを向ける。
ここで颯爽とケンシロウが助けに入るのだが、いやちょっと待てよ……コイツは種モミをそのままかじろうとしているのか? おそらくミスミじいさんは種モミが実ってから米をあげようとしているのだが、そのまま食べようとしているぞ。いくら世紀末とはいえ、そんなにひもじいのかスペードよ……。
まあ、そんなことおかまいなしにケンシロウにボウガンを放ったスペードはその矢を打ち返され、右目を潰されてしまう。
無事に村に戻ったミスミじいさんは、村人から歓迎される。あんなに小さい袋に入った種モミでも、よほど貴重なのだろう。その様子を見届けたケンシロウは満足気にすぐに村から立ち去った。お礼を気にしないところは、さすが北斗神拳伝承者だ。
ところがスペードは復讐を決め込んでいた。やめときゃいいのに車からケンシロウを「はー」と威嚇して村へ直行。村人を襲い、挙句の果てにミスミじいさんに槍を投げ、手をナイフで突き刺した。
少し遅れて村に駆け付けたケンシロウは、その残虐な行為にぶち切れる。「どうしたハゲ それまでか」と暴言を吐き、スペードの両腕を粉砕。最終的に「北斗残悔拳」によって死に至らしめた。
ミスミじいさんは可愛そうな善人キャラとして愛されており、知名度もそれなりに高い。かたやスペードって……。
■もはやユダの側近じゃないの? 怖い顔と岩すら砕く強靭な顎が魅力だった「ダイヤ」
次は「KINGの逆襲の巻」の回に登場したダイヤだ。コイツも残忍なヤツで村人を絞首刑にするだけでなく、父親の首を吊らせて幼い娘に支えさせようとするとんでもないヤツだった。
その様子を見ながら馬鹿笑いをしているうちにケンシロウに岩を口に投げ入れられてしまうのだが、ケンシロウの胸の7つの傷を見て「あらわれたか〜〜」と言い、その岩を顎で「ガリゴリ」と砕いている。強靱な顎はダイヤの唯一の魅力かもしれない。
顔もまた不気味で、アイラインを跳ね上げ、口紅?を塗りたくっている。シンの好みではなさそうで、どっちかというとユダの側近にいそうだ。
そしてダイヤは長い棒を振り回して部下を巻き添えにし、自らの速さに自惚れるものの、ケンシロウにピタッと止められ「スローすぎてあくびがでるぜ」と名言を放たれる。
さらにそのまま片手で上空に持ち上げられ「死ね くまどりやろう」と言われた挙げ句、「交首破顔拳」であっけなく死亡。というか、“くまどり”って歌舞伎のことか? さすが北斗神拳伝承者……博識である。
スペードのことを「格が違う」と馬鹿にしていたダイヤだったが、たった1話で出番は終了となってしまった。少なくともスペードは2話つないだのに……。