『笑ゥせぇるすまん』本人が幸せならそれでOKかも…「ドーン!」されたけど「ハッピーエンド?」 な回の画像
『笑ゥせぇるすまん』 [完全版] DVD-BOX(ポニーキャニオン)

 藤子不二雄Aさんといえば、『忍者ハットリくん』『怪物くん』『プロゴルファー猿』など数々の名作を世に送り出してきた、漫画界の偉人だ。そして、そんな藤子不二雄Aさんの作品の中でも、『笑ゥせぇるすまん』は、アニメ化・実写化など様々なメディア展開によって抜群の知名度と人気を誇る。

 1989年から1993年にかけて放送されたテレビアニメは、そうしたメディア展開の先駆けとなったもので、完成度も非常に高かったことから、いまなおファンが多い。

『笑ゥせぇるすまん』は、アニメの冒頭に流れるナレーションで喪黒福造が「私の取り扱う品物は心」と言うように、悩める人間の「ココロのスキマ」を埋めるのがテーマになっていて、基本的には喪黒福造の忠告に従っていれば利益や幸せを享受できる……はずだ。だが、人間は欲深いもので、ついついよこしまな願いが表に出てきてしてしまう。そうなると、結局喪黒福造に「ドーン!」されて不幸になったり痛い目に遭ったりしてしまう、というのが『笑ゥせぇるすまん』のテンプレートだ。

 ただ、作中には「ドーン!」されたにも関わらず、ハッピーエンドを迎えた人や、他人から見れば不幸だが、本人は幸せそうにしている、といった場合もある。

 そこで今回は、喪黒福造に「ドーン!」されたけど、ハッピー(?)な結末を迎えた回を紹介してみよう。

■愛する亀といつまでも一緒!「ガラス越しの愛」

 まず紹介するのは、第69話「ガラス越しの愛」だ。プログラマー・甲田亀太郎は、見た目も名前も亀っぽく、亀に強烈なシンパシーを感じていた。中でも、水族館で飼育されている亀の亀次郎を溺愛していた。ある日、水槽の前で喪黒に話かけられ、意気投合。喪黒から、ガラス越しではなく、直接亀次郎に会ってみたらと持ちかけられ、次の休館日に水族館近くの砂浜で待つように言われる。すると、砂浜に亀次郎が現れ、感動する甲田。甲田は亀次郎と心通わせ、なんと、亀次郎を自宅に連れ帰ってしまう。

 すると、喪黒がパソコンのモニター越しに現れ、会わせるために一時的に借りただけで連れ帰れとは言っていない、早く水族館に返せと警告する。亀次郎と離れたくないと拒否する甲田に、ならば亀次郎といつも一緒にいられるようにしてやる、と喪黒が「ドーン!」を決める。

 そして、亀次郎の水槽に「もう少ししたら、お前といつまでも一緒に暮らせそうだよ」と話しかける、亀と化した甲田がそこに……というところで物語は終わる。
 一般人なら亀になるのは嫌だけれども、甲田本人は嬉しそうなので、ハッピーエンド……なのかもしれない。

■出世、進学、家計…現代社会の枠組みからの解放!「ホームレスのすすめ」

 続いて紹介するのは、第83話「ホームレスのすすめ」。商社に勤めるサラリーマン・須藤礼寿は、中間管理職として上司からも部下からも責められる日々で、家では受験ノイローゼの息子、家計に悩む妻と心休まる場所がない。そんなココロのスキマを突かれた須藤は、喪黒にホームレスの元へと案内される。そのまま、喪黒に言われるがままホームレス生活へ。ただし、ホームレス生活に深入りするなと忠告もされる。

 ところが須藤は、その日暮らしのホームレス生活の素晴らしさに心酔してしまう。喪黒には社会復帰を勧められるが、結局は行き着くところまで行くしかないと「ドーン!」されてしまう。そして須藤は、夫の不在でますます困窮し絶望する妻の前に現れ、笑みを浮かべて手を差し伸べる。ラストでは、どこかの島で原始人のような生活を満喫する須藤一家の姿が……。

 お金や社会的地位に悩まされる現代社会の苦しみから解放された須藤一家は、果たして不幸になったと言えるのだろうか? その答えを簡単に出すことができない視聴者にとって、考えさせられる結末だった。

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