1986年より、その壮大な物語がスタートした荒木飛呂彦氏による漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)。各部にはあまりにも凶悪な敵キャラが多数登場してきたが、3部でDIOに暴走運転を命じられた上院議員のように、ただそこにいたせいで彼らの悪意に巻き込まれてしまった悲劇の一般人もたくさんいた。
しかもその多くは、スタンド使いに何かをしたわけではなく、仕事をしていたり、日常を過ごしていただけだから理不尽でしかない。今回は、スタンド使いの戦いに巻き込まれて悲惨な死を迎えた一般人のエピソードを紹介していきたい。
■顔を切り落とされたホテルマン
DIOとの戦いだけでなく、第3部は一般被害者が多いシリーズだった。ここからスタンドが登場したため、「こんなこともできる」という能力の恐ろしさを一般人を使うことで演出していたのかもしれない。
3部で特に惨たらしい死に方をしたのが、ポルナレフとスタンド「エボニーデビル」との戦いに巻き込まれたホテルマンだろう。
このスタンドの本体は「呪いのデーボ」なる男で、空条承太郎たちを殺害すべくエンヤ婆から送り込まれた刺客の1人。エボニーデビルは人形に取り憑く遠隔操作系のスタンドで、映画『チャイルド・プレイ』のように汚い言葉を吐きながら刃物で対象を切り刻む凶悪な敵だった。
ポルナレフは一人で宿泊するホテルで不意をつかれて襲われる形となり、暴れ回ってベッドにくくりつけられることになる。そして絶体絶命のときに、ホテルマンが部屋にやってきたため、運悪く彼がエボニーデビルの被害に遭ってしまうのだ……。
ポルナレフが逃げるように叫ぶも間に合わず、ホテルマンはエボニーデビルによって顔を削ぎ落とされてしまった。切れ味のよいカミソリによって顔面をペロンとスライスされるという、その後のシリーズでも見ない屈指のグロい死に方をした彼。何も知らずに仕事をしていただけなのに、無慈悲に殺されてしまった、可哀想としか言いようがない一般人だ。
■靴のムカデ屋の店主爆発
第4部のボス・吉良吉影は人の命を奪うことを少しもためらわない人物で、その非道さを表すように、「靴のムカデ屋」の男性店主は吉良によって一瞬で殺されてしまった。
重ちーが残した吉良のボタンを頼りに、持ち主を探すため服の修復を行う「ムカデ屋」に訪れた承太郎と広瀬康一。店主は吉良から預かっていたジャケットの名前を確認し、承太郎たちに知らせようとするが、コーヒーカップを持っていた右手が爆破されて吹っ飛んでしまう。これが吉良による遠隔攻撃だと承太郎が気付くもすでに遅く、店主の口の中には吉良のスタンド「シアーハートアタック」が突っ込まれていた。
爆弾が口に突っ込むという描写はかなり怖く、そのまま見ていることしかできない承太郎たちの前で、店主は爆死してしまうのだった。ただ吉良のジャケットのボタンを付け直しただけなのに、殺されてしまうとは本人も予想できなかっただろう。