トラウマ描写に胸がえぐられる…少年漫画で描かれた「元は人間だった」悲しき子どもたちのエピソードの画像
講談社漫画文庫『新装版 デビルマン』第1巻(講談社)

 少年漫画には、胸がえぐられてしまうようなトラウマシーンやトラウマエピソードが付き物だ。『ドラゴンボール』のクリリンのように感情移入していたキャラが無惨にも死んでしまうシーンや、『地獄先生ぬ~べ~』の「赤いチャンチャンコ着せましょか…」のようなホラーシーンなど、さまざまな描写でトラウマを植え付けてくる。

 中でも、子どもが残虐非道・冷酷無情な目に遭っている描写は、見ていて本当に胸が痛くなってしまうものばかり。そこで今回は、「元は人間だった」という悲しき子どもキャラのエピソードについて紹介しよう。

■悪魔の甲羅の一部にされた「サッちゃん」

 まず最初に紹介するのは、永井豪氏の漫画『デビルマン』に登場する「サッちゃん」という女の子。数々のトラウマを読者に植え付けてきた同作だが、サッちゃんのエピソードは作中でもかなり強烈なものだった。

 サッちゃんは、主人公・不動明がかつて住んでいた家の隣人の子ども。少しませたところがあるかわいらしい彼女だったが、明に会うために新幹線ではるばるやってきたサッちゃんは、帰りの車内で、悪魔「ジンメン」に捕食されてしまう。

 幼い子どもが食されるだけでもエグい話なのだが、さらに酷いことに、サッちゃんはこの「ジンメン」の甲羅の一部になってしまうのだ。ジンメンは人間を食うと、食した人間の顔が甲羅に浮かび上がる。そして、その状態でも人間に意識はあり、「あたしは死人 あたしは死人」「まだ生きたかったのに」とつぶやくという、残酷なシーンが続くエピソードだ。

 甲羅になった人間たちを盾にした攻撃を仕掛けられ、苦悩するデビルマン(不動明)に「あたしは死んでる気にしないでー!」と叫び、ジンメンとともにデビルマンに貫かれるサッちゃん。最期は、愛する明の手によって葬られたことがせめてもの救いなのかも知れない。

■飼い犬とともにキメラにされた「ニーナ」

 続いて紹介するのは、荒川弘氏の漫画『鋼の錬金術師』に登場する「ニーナ」だ。

 彼女は物語序盤に登場する国家錬金術師ショウ・タッカーの娘。タッカーは研究者でもあり、錬金術について模索している主人公エドワードと弟アルフォンスは、人語を話す合成獣(キメラ)の錬成に成功したという彼のもとを訪ねていた。

 とはいうものの、弟のアルフォンスはニーナと飼い犬のアレキサンダーとじゃれ合い、そこにエドワードも加わり遊んでいた。

 ところが、ショウ・タッカーには研究成果を報告しなければならない「査定」の期限が迫っていた。もう後がないと判断したタッカーは、ニーナとアレキサンダーを「合成」して、人語を話す合成獣を錬成してしまう。

 合成獣となったニーナは、アルフォンスに「あそぼうよ」と繰り返す。父が殺された場面でも、人間ではなくなった彼女が「おとうさん」と言って涙を流すという、少年誌での連載作品ながらあまりにも残酷な描写で、多くの読者を震え上がらせた。

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