■余白に漂う葛藤
第42話「理非」は、アニメオリジナルの演出が多かった印象だ。七海建人の最期のシーンでは、半身を焼かれながらも戦う七海の姿が、海辺でのびのび過ごす七海の姿とリンクするような演出がされた。生死の境をさまよいながら朦朧とした意識で戦い続け、しかしだんだんと限界が近づいていく様がありありと見て取れる。
そして死の間際、主人公の虎杖悠仁に思いを託すシーンはたっぷりと余白を持たせ、時間をかけて描かれた。原作では一度しか言わなかった「駄目だ」という言葉をアニメでは三度繰り返し、視線を泳がせ、口を開こうとしては言いよどむ。そして、ついに覚悟を決めたかのように「虎杖君」と声をかけると、しばらくの沈黙を挟んだのちに「後は頼みます」と静かに言い残した。
思いを託すということは、その相手に呪いをかけることになる。それを分かっていながら、言わずにはいられなかった七海。普段は冷静で感情の見えにくいキャラだから余計に、余白の一つ一つに漂う強い葛藤が切なく、原作以上に胸の締め付けられるラストとなった。
溌剌とした青春時代から一転して暗いストーリーが続いた第2期。映像化のクオリティが高いだけに、ファンにとっては満足度だけでなく精神的ダメージも大きい半年間だった。
この後、本編はさらなる鬱展開も含みつつ、連載はいよいよクライマックスを迎えている。ワクワクするけど、あー、しんどい……それでも最後まで刮目して見守りたい。