■力を与えてはいけなかった? シリーズ屈指の悪女「カテジナ・ルース」

『機動戦士Zガンダム』に登場する強化人間フォウ・ムラサメは、エメラルド色のショートヘアに紫の唇で16〜17歳とは思えないほど大人っぽい。そして同時にキュートさも持ち合わせた、シリーズ屈指の愛されキャラだ。

 その一方で同年代でありながら、“シリーズ屈指の悪女キャラ”と評されるのが『機動戦士Vガンダム』に登場するカテジナ・ルースだ。物語序盤は一般的な道徳観を持ち合わせた普通のお嬢様だったのだが、物語が進むにつれてヒステリックで残虐な性格に変貌していった。

 ザンスカール帝国の尉官クロノクル・アシャーと出会い、MSパイロットになり、主人公、ウッソ・エヴィンの敵として苦しめ続ける存在となったが、軍人としての問題行動が多く、自国の首都上空にもかかわらずビーム兵器を乱射したり、月基地では味方の車両をかまわず踏み潰したりと味方としても非常にタチが悪かった。

 極めつけは、第49話「天使の輪の上で」にて。最終兵器エンジェル・ハイロゥを巡る攻防戦において、ウッソの動揺を誘うため、部下であるネネカ隊の女性兵士たちに水着姿でバズーカを装備させ、V2ガンダムに生身で特攻させている。極めて非人道的で狂気に満ちた作戦だろう。

 もう一度言うが、カテジナはこのとき17歳。現実世界でいうところの、高校2年生である。戦争というのはここまで人を狂わせてしまうものなのだろうか……。

 このように残虐非道を繰り返したカテジナは、前述のハマーンやキシリアとは違い戦場で死ぬことは許されず、軍人としての力はもちろん、記憶さえも失い、虚ろに生きていく存在となって作品上罰されていた。

 

 今回は、『ガンダム』シリーズに登場する女性キャラたちの意外な年齢設定を紹介してきた。その若すぎる年齢に驚いたかもしれないが、実はアニメだけの特別な設定とも言えない。たとえば、15世紀フランスにおいて有名な女性軍人ジャンヌ・ダルクも10代で軍を指揮し、そして汚名を着せられ火あぶりで処刑されたのが19歳だったと言われているのだ。

『ガンダム』シリーズの一見若すぎると思える年齢設定も、実は現実に即しているのかもしれない。戦争では、どんなにうら若き女性であろうとも大人にならざるを得ないということだろう。

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