■自身の趣味を活かした『神の雫』
『マガジン』で数々のヒット作をプロデュースした樹林さんは、1999年に講談社を退社し、作家として独立を果たす。
独立後もヒットタイトルを複数手掛けているが、その中でも異色を放つのが“亜樹直”名義で原作を担った『神の雫』(作画:オキモト・シュウさん)だ。幻のワイン「神の雫」をめぐる壮絶な争いと人間ドラマを描いた本作は、樹林さん自身のワイン好きからスタートした作品だ。
「自分のわがままで始めたので、1年も続けばいい」と本人は考えていたようだが、蓋を開けてみれば1500万部超えのベストセラーとなり、海を越え世界中で大ヒット。2009年には、世界各国の優れた料理本を顕彰するグルマン世界料理本大賞最高位「Hall of Fame(殿堂)」を受賞する快挙を達成した。
ほかにも“日本でワインの普及に貢献した”としてボジョレー・ワイン騎士団から「騎士号」の称号を贈られるなど、その功績は素晴らしく、ワインに詳しくない人間からするとすごすぎて何がすごいかわからないレベルだ。
「好きこそものの上手なれ」とはよく言うが、趣味のワインを追求して人気漫画を生み出してしまうとは驚きである。
こうして、編集者&原作者・樹林さんが生み出した作品を振り返ってきた。『金田一少年の事件簿』は推理漫画の先駆けとして『名探偵コナン』(青山剛昌さん)といった後続が通る道を切り開き、『GTO』は26年ぶりに2024年にドラマが復活するなど、時を超えて愛され続けている。
第2次マガジン黄金期最大の功績は、“樹林伸”という天才を世に出したことなのかもしれない。