■ヤクザの鉄砲玉になる運命は避けられた!?『ハイティーン・ブギ』

『ハイティーン・ブギ』は、原作:後藤ゆきお氏、作画:牧野和子氏により描かれた青春群青劇だ。ロックスターを目指す元暴走族のリーダー・藤丸翔と、彼を心身ともにサポートする宮下桃子とのラブストーリーが描かれている。

 本作で登場する翔の親友・鳴海重男は、翔との喧嘩が原因でボクサーとしての道を絶たれ、暴力団の傘下に入り命を落としてしまう。もともと彼の行動を心配した元暴走族の女メンバー・未樹は、重男が悪事をしないよう、事前にホテルデートの待ち合わせをしていた。

 しかし約束当日、仕事で疲れ切った未樹は寝坊をしてしまい、ホテルに行けなかった。重男はホテルを出たあとヤクザの指示通り鉄砲玉として敵の組員を攻撃し、返り討ちに遭い死亡してしまうのだ。

 このときもスマホがあれば“すぐに行くから待ってて!”など、未樹は重男に連絡していただろう。さらに“あと何分で着く”といったメッセージを送れば、重男もヤクザの抗争場所に行くことはなかったかもしれない。さらに狙撃を迷っていた重男に対し、思いとどまるよう何度もメッセージを送ることもできたはずだ。

 そう考えると、スマホは悪い面もあるが、人の命を救うという観点では役立つことのほうが多い気がする。

 

 今回紹介したケースは、いずれもスマホがあればの仮説であり、実際に過去を変えることはできない。スマホがあれば防げた事故やトラブルではあるが、しかしスマホがなく連絡手段がなかった時代の作品だからこそ、“悲劇”というドラマチックな展開となったことも事実だ。

 もはや私たちの生活には切り離せなくなったスマホ、せっかく使うのであれば今回紹介した悲劇が起きないよう、賢く使っていきたいものだ。

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