ファミコンが発売された80年代、世間では空前のゲームブームが巻き起こるなか、その流れを受けてファミコンにまつわる漫画作品も数多く登場した。とくに『月刊コロコロコミック』(小学館)では数多くの“ファミコン漫画”が連載され、当時の子どもたちを虜にしていた。そこで、コロコロで少年・少女たちを夢中にさせた“ファミコン漫画”の数々を見ていこう。
■どんな相手も“五十連打”でねじ伏せろ! 『ファミコンロッキー』
1985年から連載されたあさいもとゆきさんの『ファミコンロッキー』は、ファミコンゲームを題材にしながら、主人公と秘密結社の熱い戦いを描いた、異色のバトル漫画となっている。
タイトルの“ロッキー”の由来にもなっているのが、主人公の小学生・轟勇気だ。彼は拳法道場の息子として育ち、物語序盤は“ゲーム”という存在自体にも疎い少年だった。
そんな彼だが、身につけた拳法と鍛え上げた身体能力……とくにその卓越した“反射神経”を用いて、オリジナルの拳法「ゲーム拳」を編み出し、数々の大会で強豪を相手に勝利をもぎ取っていく。
なんとも破天荒な設定だが、作中、彼が見せる数々の必殺技も実にインパクト大なものが揃っている。
1秒間に50回もの凄まじい連打力を発揮する「五十連打」を基本に、腕が数本に見えるほど高速で連打する「阿修羅乱れ打ち」、衝撃波によってボタンを連打する「超速衝撃連打(スーパーインパルスアタック)」など、人間離れしたトンデモ技が飛び出すのも、ある意味『コロコロ』らしい展開といえるかもしれない。
また、登場するさまざまな“架空の裏技”も、本作の醍醐味だった。当時はゲームに隠された“裏技”を探すブームが巻き起こっていたのだが、作中でも勇気が数々の“裏技”を駆使する場面が登場する。
たとえば『F1レース』(任天堂)で「五十連打」によって限界を超えたスピードで自機を加速させたり、『バンゲリング ベイ』(ハドソン)で自機を高速回転させて竜巻を発生させるなど、明らかに本来、ゲームには組み込まれていない現象を巻き起こし、勝ちをさらっていく。
今でこそ“ありえない”と思えるかもしれないが、当時はこれらの“裏技”を信じ、真似をして試してみた読者も多かったようだ。独特の作風で、ファミコンを“バトル漫画”の域にまで押し上げた、なんともインパクト大な一作である。
■数々の難事件に挑む“少年団”の物語『熱血!ファミコン少年団』
1986年から連載されたさいとうはるおさんの『熱血!ファミコン少年団』は、ファミコンだけでなく実在の人物や企業が多数登場する、“ファミコン実録漫画”というなんとも面白いジャンルの一作である。
当時『コロコロコミック』ではファミコンブームをさらに盛り上げるため、雑誌内で「ファミコン少年団」なる企画を立ち上げていた。雑誌に会員証やパスポートがついてくることから読者にも人気の企画だったのだが、これを主軸に取り入れたのが、この『熱血!ファミコン少年団』というわけである。
作中ではファミコンを取り巻くさまざまな“事件”が巻き起こり、少年団の面々がこれに立ち向かっていくこととなる。ゲームに関しての詐欺を働く集団や、ときには誘拐や襲撃を行う組織が登場したりと悪役たちも実に多種多様。事件解決に立ち向かう少年たちの奮闘はもちろん、彼らが数々の難事件を経て大人になっていく“成長劇”も本作の見どころの一つだった。
その人気から多くのファンを獲得した一作で、2020年には『コロコロアニキ』(小学館)で新たな読み切り『ファミコン少年団2020』が掲載され、当時の少年団の面々が大人になり、新たな事件に立ち向かっていく姿が描かれている。
また何を隠そう、本作のレギュラーキャラの一人・高橋利幸のモデルは、かの有名な“高橋名人”だ。2020年版では61歳のスキンヘッド姿となっており、我々が良く知る“名人”の姿となって再登場を果たした。
時代を経てなお、新たな展開でファンを楽しませ続けているリアリティ溢れる“ファミコン漫画”である。