■京都のシンボルが謎を解くカギ?

 京都市街地の真南に位置する京都駅は、“京の玄関口”と呼ばれる。そこに建つ京都タワーは、京都の顔である。歴史的景観保護のため高い建物が規制されている土地だから、地上131メートルの京都タワーは、遠くからでもよく目立つ。

 しかし、いまだに特番やドラマなどで京都を扱う際のテッパンは、東寺の五重塔を背景に鐘の音がゴーン……という映像だ。本作でも、最初に生命科学研究所が登場したときは、やはり五重塔の映像から入っている。つまり、ゴジラが京都に来たことを観客に一発で伝えるには、わざわざ迂回させてでも五重塔との共演が理想的だったのだろう。

 同様に全国的に京都のシンボルとして認知されているのは、清水の舞台か、二年坂・三年坂から臨む八坂の塔ではないだろうか。とくに壮大な清水の舞台とゴジラとの取り合わせは迫力満点で、京都らしさもゴジラの脅威も両方よく伝わってくる。わざわざ寄り道する価値のある場所ではないだろうか。

■怪獣が歩き回るのに向かない街?

 ところで、東寺は真言宗の総本山、清水寺は北法相宗の本山だ。どちらも破壊せずスルーしたのも当然で、いくら日本を代表する特撮映画といえども、やはり古くからある信仰の場を気軽に踏みつぶすわけにはいかないのだろう。

 京都では、このように各宗派の総本山やら何やらが街のいたるところにある。そんな街の数少ない気兼ねなく壊せる建物、それも高くて目立ってそれなりに街のシンボルになっているのが、京都タワーだ。東寺からも近いし、まさにうってつけの建物だ。だからだろうか、京都タワー相手には口から光線を吐いて容赦なく破壊していた。

 しかし、破壊するのがタワー一棟だけでは物足りない。そこで次に映し出された三条大橋付近だが、ゴジラが踏み荒らしていたのは橋の南西あたり、おそらく四条河原町から木屋町あたりだと思われる。このエリアは京都の繁華街で、商業ビルや飲食店などが軒を連ねている。寺社仏閣はあるものの、ほかのエリアと比べると格段に破壊しやすい場所だろう。三条から五条とルートが前後したのは、まず京都タワーからの続きで街を破壊する様子をしっかり演出するためではないか。

 これらはどれも推測の域を出ないが、いずれにせよ、京都とは怪獣が歩くのにはあまり向かない街のようだ。

 

 以上、30年前のゴジラの京都上陸ルートについて考察した。

 現在、ゴジラシリーズ最新作となる『ゴジラ ー1.0』が11月3日から公開中だ。ゴジラ生誕70周年の記念作品となる今回は、戦後の日本を舞台としている。第1作目で「核の落とし子」と言われたゴジラは、実際に核の脅威を目の当たりにしたあの時代の人々の目にどう映るのか。ぜひ劇場で確かめたいところだ。

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