恋の力は偉大だ。好きな人ができたことで綺麗になったり、ダイエットを頑張れたりする。また、好きな人からの応援で普段より力が出た……なんてことも、スポーツをやっている人であれば経験したことがあるのではないだろうか。
そこで今回は、スポーツ漫画において好きな人の存在で奮起し、力を発揮したキャラたちを紹介する。彼・彼女たちはいったいどんな場面でどんな力を発揮したのだろうか。
■『YAWARA!』それまで不調が嘘のような一本背負いで優勝した猪熊柔
はじめに、浦沢直樹氏の『YAWARA!』から、ヒロイン・猪熊柔を紹介する。
ユーゴスラビア世界選手権、48キロ以下級の日本代表になった柔は、前日まで試合がなかった伊東富士子とともにプレッシャーを感じることなく気楽に過ごしていた。
しかし、日刊エヴリースポーツの新聞記者・松田耕作が現地へ到着していないことを知ると、急に試合が怖くなり絶不調に。一回戦から精彩を欠き、それでもなんとか決勝まで進むも、柔本来のキレのある柔道にはほど遠かった。
そして、ソ連代表の強豪・フルシチョワとの決勝戦。調子を取り戻せず苦戦する柔だったが、試合中、会場へ駆けつけ大声で応援を送る松田に気づくと、それまでの絶不調は嘘だったかのようにあっという間にフルシチョワを一本背負いで投げ飛ばし、見事優勝を掴み取る。
また、その後のストーリーでも、松田の存在により柔が奮起する姿はよく見られる。
物語終盤でのバルセロナオリンピックでも、トラブルにより会場に来られない松田の写真入り身分証明書をお守り代わりに気持ちを落ち着かせていたり、クライマックスへと続く無差別級でも、松田の数々の応援を心の支えにしていた。
当初は、お節介で暑苦しい松田のことを迷惑がっていた柔だが、気づかないうちにかけがえのない存在になっていったのだろう。試合中には「松田さんがこの試合を見てる!!」と奮起し勝ち上がっていき、最終戦となったジョディ・ロックウェルとの試合前には「松田さん!! あたし、思いっきりやります!!」と、前を見つめる姿が印象的だった。
■『SLAM DUNK』山王戦ピンチを救った彩子からのメッセージ・宮城リョータ
次に、井上雄彦氏の『SLAM DUNK』から、“湘北の切り込み隊長”であるポイントガードの宮城リョータを紹介する。
インターハイ2回戦・本作のラスボスとなる山王工業高校戦。わずか2点だが、リードをして前半戦を折り返すことができた湘北。しかし絶対王者である山王は、後半開始から“フルコートプレスディフェンス”を使い、試合を決めに来る。
宮城は全国トップクラスの選手である深津一成と沢北栄治に囲まれ、インターセプトを食らいまくる苦しい展開。山王が16点を積み上げていくなか、湘北は未だ無得点だった。
ここで、タイムアウトを取る安西先生。それまでボール運びは宮城・三井・流川の3人でしていたが、三井と流川を前線に上げ、ボール運びを宮城1人に任せる戦術に切り替える。
もちろん、この戦術を成立させるには「宮城が深津と沢北をドリブルで抜くこと」が絶対条件。任された宮城も困惑しているようだったが、それを察したのだろう。宮城の想い人・マネージャーの彩子はペンで『No.1ガード』と、宮城の手のひらに書く。普段は宮城をまったく相手にしていない様子の彩子だが、彼を信頼し一番理解しているのも彼女であった。
そこから宮城の表情は変わり、パスをもらうと一気に深津と沢北を置き去りにし、さらには「スピードなら…No.1ガードはこの宮城リョータだぴょん」と、相手を翻弄する余裕すら見せていた。
その後も苦しい展開が続く山王戦だが、ここで“フルコートプレスディフェンス”が攻略できなければゲームが詰んでいただけに、宮城の奮起は非常に大きかった。昨年公開された映画『THE FIRST SLAM DUNK』でも、名シーンの1つとなっている。