ザク強行偵察型、ボリノーク・サマーン…何がどう違うのか 『ガンダム』シリーズに登場する「偵察用モビルスーツ」の性能とはの画像
アニメ『機動戦士Zガンダム』DVD第1巻より
全ての写真を見る

 1979年のテレビアニメ『機動戦士ガンダム』から始まった『ガンダム』シリーズは、ミノフスキー粒子によって、センサーが使えなくなった宇宙での人々の戦争を描く物語だ。しかし、そんな中にも偵察・索敵用のモビルスーツがいくつか登場してきた。これらの偵察用モビルスーツは、どういった性能で、その目的を遂行しているのだろうか。

■『ガンダム』シリーズにおける偵察用モビルスーツの必要性

 現実の技術力がとうてい及ばない、はるか未来の世界を描く『ガンダム』シリーズ。現実世界では、戦車や戦闘機による直接的な戦闘は下火になり、長距離弾道ミサイルによる本土への直接攻撃が主流になるであろうと予測する人は多い。今後の戦争は、ハッキングなどの電子戦や、レーダーの性能によって勝敗が決まる、電脳戦争になるのではないかと思われるからだ。

 そして、『ガンダム』シリーズが描くのは、そこからさらに技術力が進み、人類が宇宙に進出した時代。そんなハイテクな世界で、人力操縦による偵察用モビルスーツが意味を成すのだろうか。

 答えはイエス。意味を成すのである。『ガンダム』シリーズの世界には、電波や赤外線を遮断するミノフスキー粒子が存在する。宇宙世紀以外の世界にも、それに類似したものがある場合が多い。

 ミノフスキー粒子が濃い地域では広域な通信障害が発生してしまい、長距離レーダーや、ミサイルの遠隔誘導が使えなくなってしまう。

 また、戦闘においては、ミノフスキー粒子の薄い場所では、濃度の濃いミノフスキー粒子を故意に散布することで、レーダーを妨害するという手法が基本となっている。

 そのため、ミノフスキー粒子の濃い状態での戦闘が一般的であり、その状態でのモビルスーツ戦は、人が操縦する兵器同士の白兵戦が基本となる。むしろ、剣と盾と弓で戦っていた時代に逆戻りをしているという環境となっている。

 そんな中で、ミノフスキー粒子の影響を、出来る限り受けづらくしたレーダーは貴重である。偵察用モビルスーツは、かなり重要なポジションにあると考えることができる。

■ミノフスキー粒子とセンサー出力との競争

 そういったミノフスキー粒子を打ち破るために、センサーを強化した機体が、模型オリジナル企画『MSV』で描かれた「ザク強行偵察型」や「ザクフリッパー」などのモビルスーツだ。

「ザク強行偵察型」は、横ロールしかできなかったモノアイカメラを縦にロールできるように改良し、視界を広げてある。そのため、ドムのような目をしている。またセンサーも、ミノフスキー粒子下でも半径3200メートル以内の探知が可能な高出力のものを積んでいる。ミノフスキー粒子に対応したモビルスーツである。

 しかし「ザク強行偵察型」の総生産数は100機前後にとどまっており、ミノフスキー粒子に対応したセンサー類の大量生産が、いかに難しいかを物語っている。

「ザク強行偵察型」の発展機として「ザクフリッパー」が存在する。「ザクフリッパー」の目は特徴的で、『装甲騎兵ボトムズ』に登場する「スコープドッグ」のような、3つのスコープカメラ。

 この理由は、従来の光学系センサー以外に、ミノフスキー物理学を応用したセンサーが使えるようになっているからだ。ミノフスキー粒子を応用するための学問であるミノフスキー物理学。それに対応するために、こちらもミノフスキー物理学を使うという発想となった。

 モビルスーツではないが、ジオン軍の偵察哨戒「ルッグン」は、「ザク強行偵察型」のようなミノフスキー粒子対応の高出力センサーを持っており、かつ、自身もミノフスキー粒子を散布できるという性能となっている。こちらも目には目を、ミノフスキー粒子にはミノフスキー粒子をという発想である。

  1. 1
  2. 2