■トリックスターの裏の顔…恋に一途な純情家
ラオウがラスボスなら、実力者でありながら自由気ままにふるまい、飄々としてラスボスを翻弄するジュウザはトリックスター的なポジションだ。
しかし彼がふざけているのは、最愛の女性であるユリアが血のつながった妹だと知った絶望から。楽しそうに暮らしながらも、裏の顔は破れた恋心を慰めようとする純情な青年なのだ。そして南斗最後の将の正体がユリアと知ったジュウザは、命を捧げて戦う覚悟を決める。
思えば、彼は自由だが決して自分勝手ではない。悪党からさらった美女たちに対しても、実は村で子どもが待っていると知ると、落胆しながらも大量の食料を持たせて解放している。
一人の女性を一途に思い、子や母の気持ちを思いやる。そんな実直で器の大きなところも、彼の魅力だ。少年たちにとっては、まさに“将来こんな男になりたい!”と思わせる理想の男性像ではないだろうか。
自由でいい加減で女遊びもするけれど、器は大きく仕事もできて、実は一人の女性を守るために命を捧げた純情家でもある……こうして振り返ってみると、ジュウザの魅力は当時の時代背景にも絶妙にマッチしているように思う。当時の少年たちが憧れる“理想の男”を、彼は見事に体現していたのではないだろうか。
とはいえ、令和の世でもまだまだその人気は健在だ。それは、時代が変わっても私たちが自由に憧れる気持ちは変わらないという証拠なのかもしれない。