ギャンブルがテーマの漫画作品では、お金だけでなく命を賭けて勝負をするような戦いがいくつも描かれてきた。おこなわれるゲームのジャンルはさまざまだが、主人公たちがどうやって勝利を手にするか、先が読めないのが面白いところ。
常に勝っている人間には、自分は絶対に負けないという自信がある。しかしそのせいで足元をすくわれ、逆転されてしまうケースも少なくない。そこで今回は、心の底から「ざまーみろ!」と叫んでしまいそうな逆転劇をいくつか紹介したい。
■『カイジ』チンチロ勝負!大槻VSカイジ
手に汗にぎるゲームが登場する漫画といえば、福本伸行氏による『カイジ』は外せない。本作では「限定ジャンケン」をはじめ、「Eカード」に「ティッシュ箱くじ引き」など、数々の名勝負が描かれてきた。その中でも特に鮮やかだったのが、カイジが地下強制労働施設で班長・大槻を相手におこなった「チンチロ勝負」だ。
大槻は定期的に賭場を開帳し、自分の側近以外の人間をカモにしていた。彼らが楽しんでいたのは、「チンチロ」と呼ばれる3個のサイコロを使ったギャンブル。出た目の強弱で勝負を競うゲームで、「ゾロ目」や「4・5・6」など特殊な出目によってポイントが変動する面白さもある。単純なギャンブルかと思いきや、ここで大槻は「4・5・6」のいずれかしか出ない特製のサイコロを使い、自分たちの手番で弱い目が絶対に出ないようイカサマをしていたのだ。
そのことに気づいたカイジは、イカサマを暴くため準備を整える。そして大金を賭けた勝負に持ち込み、大槻が引くに引けない状況を作った上で、多くの観客の前で特殊サイコロのイカサマを暴くことに成功する。
当然ながらそれまでの被害者から非難が集中し、大槻は地位を失い窮地に陥る。しかしここでカイジがゲームを終了させなかったのがポイント。彼は逆に3個すべてが「1の目」になっている、5倍付け確定となるピンゾロ賽を用意して勝負続行を申し出る。
結果として、大槻の隠し預金は一瞬で全て吹き飛んでしまった。福本作品の醍醐味でもある胸スカ展開の中でも、特に爽快感のあるラストだったのではないだろうか。
■『嘘喰い』迷宮ギャンブル!斑目貘VS天真征一
2022年に実写化もされた迫稔雄氏の『嘘喰い』には、命賭けのギャンブルが多数存在する。その中で特にスカッとしたのが、警視長である天真征一との「迷宮ギャンブル」だろう。
天真は警視庁のエリートで、邪魔な存在は容赦なく切り捨てる。そんな天真は主人公・斑目貘と警視庁の地下にある迷路を舞台にした勝負をおこなった。
このゲームは迷宮に閉じ込められたプレーヤーの中で、誰が一番早くゴールするかを競うもの。ひとつの部屋を通るたびにポイントが加算され、もし他のプレーヤーと鉢合わせになった場合は戦闘開始となる。それぞれ所有しているポイントを好きな分だけ提示し、大きいポイントを提示した者の勝利。勝者には30秒間の一方的な暴力が許される。
獏も天真も武闘派というわけではないので、暴力を許されてもそれほど大したことではない。しかし、両陣営には人を素手で簡単に殺せる仲間がいる。獏には廃ビルの悪魔と呼ばれるマルコ、天真には警視庁密葬課の箕輪勢一が付いていた。そのため、獏も天真も相手陣営の仲間に会うのだけは避けなければならない。
すると天真は、開始早々に自分なりの必勝法を見つける。彼には色聴と呼ばれる能力があり、音を聞き分けることでどこに誰がいるのか?自分のいる位置はどこか?を把握できた。それを使って、最短でゴールを目指そうとしたのだ。
彼にとって唯一の不安要素はマルコと出会うことである。そのため天真はマルコに出会わないよう色聴を頼りに進んでいたが、獏はそれを見抜いていた。そして、その能力を逆手に取ってマルコと天真が出会うように仕向ける。
不可避だということに気づいた天真は、獏の靴を舐めて「許して!! 助けて!!」と懇願していた。そのまま獏の勝利となったが、散々好き勝手してきた人間の無様な姿には、誰もがスカッとしたはずだ。