■男性優位が当たり前…!? 男のサークルに入れる女性は“美女”だけ
総務部に移動になった麻理鈴は、男性社員の石井に誘われ“会社の若い連中の情報交換会”というサークルに参加する。「みんなエリートなんですか」と質問する麻理鈴に対し、プライドの高そうな男性たちは「当たり!」「近江物産未来のシンクタンクたち!」と偉そうに答える。
その後、次々に麻理鈴に質問をする男性たち。しかし、彼女を見定めた後「ひさびさに本物の落ちこぼれだな」「わがサークルには不合格」「いままでどおり美女だけにしとこうな」という結論に……。そのうえ、美女の佐々木に対しては「ぼくらで送りますよミス総務」と言って、美人とそうでない女性に対して態度をガラリと変えていた。
作品では少し誇張して描かれているかもしれないが、昭和の時代は男性優位が色濃く、社会人サークルに入れる女性は美人のみといった驚くべき分け隔てもあったのだろう。女性は仕事ではなく、結婚をして家に入ってくれればいいといった考えが根強かった時代である。
しかしサークルの帰り際、麻理鈴は“さっき話してた社史のことですが、あれは天保10年ではなく3年です! おやすみなさい”と堂々と言い返す。驚く男性を尻目に元気よく手を振る麻理鈴。このシーンに、女性である筆者は大変スカッとした。
『悪女』ではこのほかにも、部署全体に効率よくお茶を配るアイデアや、ブラウン管がついた大きなパソコンに悪党苦戦する社員など、昔懐かしいシーンが多く登場する。
バブルのころの華やかな雰囲気は良い面もあるが、女性はまだまだ社会で活躍できず、苦い思いをした人も多かっただろう。『悪女』はそんな社会に一石を投じ、女性の働き方を後押ししてくれた作品だ。現代の女性の働き方と見比べて、今一度作品を読み直してみるのも面白いだろう。