■幼なじみに初恋相手の幻影を重ねる

 最後に紹介するのは第22話「シロッコの眼」で、幼なじみのファ・ユイリィから言われた「しつっこいんです、男の癖に!」というセリフ。これもカミーユがまだフォウに対して気持ちの整理をつけられていないときのシーンだ。

 ファがパイロット候補となったため、カミーユは「ファは戦争に関わってほしくない」と感じていた。しかし、ファは戦争が激化していることを直視できていないカミーユにイラ立ちを感じ、このセリフを放っている。また、カミーユは地球であったフォウに気をとられていて、ファにその幻影を重ねる描写もある。ファはそれを見抜き、「カミーユはアーガマに帰還したものの、心はここにいない」と嘆いていた。

 セリフだけを見るとかなりキツく、「男の癖に」という言い方もトゲトゲしさが目立つ。個人的に、ファはカミーユの良き理解者というイメージが強かったが、「カミーユって無神経なんです」というセリフもあり、「こんなにキツい言い方をしていたっけ」と驚いた。しかし、そもそもファはカミーユに恋愛感情を抱いていたように思えるため、年頃の少女の感情をリアルに描いているのかもしれない。

 カミーユはパイロット適性とニュータイプ能力が高く、テレビ版の最終回では精神崩壊という衝撃的なラストが描かれるため、ガンダムシリーズでもある意味伝説的なパイロットと言える。しかし、フタを開けてみれば多感な17歳。シリーズ後半は成長した姿が見られるが、前半ではワガママを言っていることも多い。しかし、これこそがガンダムにおけるヒューマンドラマではないだろうか。筆者はカミーユの若さによる人間臭さが大好きだ。

  1. 1
  2. 2