■終わったことに驚いたファンも…『保健室の死神』
続いて紹介するのは、2021年にアニメ化された『怪物事変』で知られる藍本松氏の『保健室の死神』。2009年42号より約2年にわたって連載され、本誌での最終回後に『少年ジャンプNEXT!』にて「完結編」が掲載。コミックスは全10巻刊行されている。
同作は、「病魔」を消滅させることができる養護教諭・ハデス先生(派出須 逸人)を主人公にした学園ホラーコメディ。連載当初こそ、ハデス先生のひび割れた不気味な顔をはじめホラー要素が強い作品だったが、後にギャグやお色気方向が強化されシフトチェンジしていった作品だ。
コミックス1巻の帯に「学園ホラーコメディ」と書かれているように、同誌のホラー漫画『地獄先生ぬ~べ~』の系譜にあたる作風だが、中学校を舞台とした『保健室』は思春期の悩みや家庭問題など「人の負の感情=病魔」が題材となっており、どのエピソードも現代的で読み応えがあった。
藍本氏の高い画力で紡がれる本作は美麗で読みやすく、どのキャラクターも魅力的。ハデス先生の秘密が少しづつ解明されていく楽しみがあり、またハデス先生への空回り気味なアプローチがかわいい才崎美徳先生や、年齢不詳のゴスロリ校長・三途川千歳、けだるげな美女・蛇頭鈍など女性キャラがかわいく、彼女たちが活躍する回が楽しみだったという読者も多いのではないだろうか。
以上、今回は2000年代中期の『ジャンプ』の名作を振り返ったが、福島鉄平氏の『サムライうさぎ』や江尻立真氏の卓球漫画『P2!-let’s Play Pingpong!-』など、長期連載が目立っていたこの時期の『ジャンプ』の中では埋もれてしまった作品は多い。確かに、連載の長さは人気の高さを知る一因ではあるが、ファンにとって思い出に残る作品はアンケートでは計れないのは言うまでもない。