2023年9月29日に『金曜ロードショー』(日本テレビ系)での異例の初回特番放送を行い、鳴り物入りでスタートしたアニメ『葬送のフリーレン』。原作は『週刊少年サンデー』で連載中の山田鐘人氏、アベツカサ氏による同名漫画で、「ベイブレード」や『実況パワフルサッカー』とのコラボが行われるなど話題が続いており、公式Xは24万フォロワーを突破。今もっとも注目される作品のひとつだ。
魔王討伐後の世界を舞台に、千年以上生きる魔法使い・フリーレンと彼女の仲間たちの冒険を描く同作だが、『葬送のフリーレン』をはじめとして、最近では女性主人公漫画を原作としたアニメ作品が好調だ。『週刊少年ジャンプ』や『週刊少年マガジン』では最近までヒット作が稀にしかなく、2010年代に入ってようやく『めだかボックス』などが注目され始めたが、未だに多くは無い。
そんな中で『葬送のフリーレン』が話題作となったのは、『週刊少年サンデー』の、脈々と受け継がれてきた女性主人公漫画が影響しているのかもしれない。今回はそんな『サンデー』の女性主人公漫画を振り返ってみよう。
■リアル重視なロボットもの『機動警察パトレイバー』
70年代から80年代にかけて、細野不二彦氏の『さすがの猿飛』や高橋留美子氏の『うる星やつら』など、ヒロインがW主人公のひとりとしてメインで活躍するラブコメ作品は多かった。また90年代には椎名高志氏による『GS美神 極楽大作戦!!』や、最近では福井セイ氏による女性漫才師漫画『かけあうつきひ』など、昭和から現在まで『サンデー』では女性主人公による漫画作品は珍しくない。
そんな中、テレビアニメ化した漫画で、女性主人公の成長を描いたものといえば、一番手はヘッドギア原作によるゆうきまさみ氏の漫画『機動警察パトレイバー』の泉野明だろう。いきなりロボットもの。それも、ロボットものの中でもクセの強い作品である。
ロボットが大型特殊車両程度の扱いになっていたり、警察VS犯罪者の物語だったりと、女性が主人公であるといった要素以外にも、ロボットアニメとして掟破りな作品であった。
メディアミックス作品としてアニメが企画されていたところ、1988年にゆうき氏の漫画が先行して開始され、同年にOVAが発売。その後もアニメ映画や小説や実写映画など、断続的に作品が世に出続けている。現在でも『パトレイバーEZY』という企画が動いているなど、未だに活発なコンテンツである。
■不良ラブコメトランスもの『天使な小生意気』
他の作品と比べると知名度は低いものの、テレビアニメ化した『サンデー』の女性主人公漫画としては外すことができないのが、11月2日放送の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「ラブコメ漫画サミット」でも紹介された西森博之氏による『天使な小生意気』だ。
1999年から2003年にかけて連載された同作。基本はラブコメとはいえ、西森氏の前作『今日から俺は!!』に引き続き不良漫画の要素も強めの作品である。蘇我源造という存在感の強い男性が登場するものの、彼はサブ主人公かメイン脇役といったポジションとなっており、作品の主人公は一人称“俺”の絶世の美少女・天使恵である。彼女はもともとは男の子であったが、あることをきっかけに「男の中の男」になるはずが「女の中の女」になってしまったというキャラクターだった。
不良漫画としてバトル要素もあるが、そういった展開がある女性主人公漫画の中でアニメ化された作品は、2002年の時点ではまだまだ珍しかった。ラブコメとしても不良漫画としてもジェンダーをテーマとした漫画としても、『機動警察パトレイバー』と同様、かなりの異色な意欲作ではないだろうか。