連載終了から30年! 浦沢直樹『YAWARA!』に登場する「女子大生編柔道部チーム」を振り返るの画像
ビッグコミックス『YAWARA!』完全版 デジタル Ver.第1巻(小学館)

 浦沢直樹氏の『YAWARA!』は『ビッグコミックスピリッツ』にて、1986年から1993年まで連載された人気漫画だ。今年で連載終了から30年になる。

 物語中盤、主人公・猪熊柔の三葉女子短大柔道部での活躍を描いた女子大生編も印象深い。柔以外は全員素人の“日本一弱い柔道部”と言えるスタートだったが、人気キャラの伊東富士子をはじめ、なかなか個性豊かなメンバーが揃っていた。そこで今回は、彼女らの見せ場とともに、三葉女子短大柔道部チームを振り返ってみよう。

■元バレリーナの「伊東富士子」

 柔が入学した当初、そもそも三葉女子短大には柔道部はなかった。柔道部を作ったのが、作中屈指の親友となる伊東富士子(いとうふじこ)である。

 富士子はバレエで世界一を目指していたが、身長が伸びすぎて、さらにトゥシューズを履けなくなってしまい断念。(ちなみに、原作では身長175cm、アニメ版では180cmの設定)。絶望してぼんやり見ていた柔道中継で、小柄な女の子が大柄な相手を次々と投げ飛ばす試合を見て感動する。

 短大入学後、その女の子が今“友人”として隣にいる柔だと気付くと、彼女に柔道を続けてもらいたいあまりに柔道部を創設。自らも柔道をはじめ、第二の夢を追うこととなる。

 富士子は女子大生編以降も活躍し続ける人気キャラで見せ場も多いのだが、“柔道で世界一なんかになりたくない”という柔に対して「あなたは選ばれた人なの!」と説き、そして、「踊りたかった……世界の舞台で……」「あなたならできるんだから……あたしのかなわなかった夢が……」と、涙ながらに説得するシーンはとくに印象的だったように思う。

 富士子は短大卒業後も高身長で元バレリーナという特徴を生かし、世界的な大会で次々と結果を残していく。バルセロナオリンピックでは初戦で敗れるも、気合で敗者復活戦を勝ち上がって最終的には銅メダルを獲得していた。

■虚弱体質の「日陰今日子」

 日陰今日子(ひかげきょうこ)、通称“キョンキョン”。身長150cm未満、体重36 kgのお嬢様。虚弱体質で体育の授業も見学、運動会や修学旅行などの学校イベントにも参加できなかったため、柔道部には体を丈夫にするために入部する。作中を通して、柔より小柄な女性は珍しかったのではないだろうか。

 初戦の筑紫大学との練習試合では、柔道をやりたくないと会場になかなか姿を現さない柔に代わって大将を任され、真っ青になりながらも直前まで体を温めていたのがなんとも健気だった。柔が会場に現れたあとも自らの意志で試合に臨み、結果は内股を受け気絶してしまう。

 しかしその後もキョンキョンは柔道を続け、聖身女学館の選手に出足払いで念願の一本勝ちを果たしている。終盤はかなり健康的になっていた様子だった。

■わがままギャルの「小田真理」

 小田真理(おだまり)、通称“マリリン”。グラマーな体でよく痴漢に遭うため、護身のために柔道部に入部する。

 空気が読めず、なぜか柔道着の下に何も着けたがらないため(!?)、筑紫大との練習試合では反則負けになってしまう。さらに、紫陽花杯では団体戦のメンバーであったが、突如姿を消して騒ぎを起こしたことも。

 卒業試合のセーヌ大戦ではキョンキョンにレギュラーの座も奪われ、残念にも三葉女子の中で唯一一勝もしていない部員となってしまった。

 そんな身勝手でトラブルメーカーのマリリンであったが、なんだかんだで卒業まで部を離れず、メンバーを最後まで応援し続けた。(レースクイーンのような姿で……)ちなみに卒業後はセクシー女優になっており、いろいろな意味で見応えがあったキャラクターであった。

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