■トンネルを通る列車だからこその名言『うしおととら』時限鉄道

 藤田和日郎氏が贈る妖怪バトルアクションの名作『うしおととら』(小学館)。第129話~138話で描かれた「時限鉄道」では、スピード感のある列車バトルが展開された。

 札幌から東京へ向かう寝台特急に乗った蒼月潮ととら。列車が青函トンネルに差しかかるころ、潮たちはかつて倒した強敵・凶羅と妖怪・山魚に襲われる。

 日光に当たると爆発する特性を持った山魚。トンネルを抜けるまでに倒さなければ列車ごと自爆されてしまうという時間制限付きバトルに、当時の読者はハラハラしたことだろう。

 このエピソードで印象的なのが、潮の父である蒼月紫暮が語った名言「トンネルってよ、いやあな時みたいだなァ」だ。列車に同乗した弱気な青年・野村を諭すように語りかける紫暮は、先のセリフに「一人っきりで寒くてよ……でもな、いつかは抜けるんだぜ」と、続ける。

 悪い時はいつまでも続きはしない……人生に希望が持てる教訓ではないだろうか。

 トンネルを走る列車での攻防がテーマの時限鉄道だからこそ、人生の苦境をトンネルに例える紫暮の言葉がより一層輝く。エピソードとキャラのセリフをつなげる藤田氏の構成力に感服するばかりだ。

 

 以上、列車バトルが面白い漫画を紹介してきた。普段と異なるフィールドでの戦いは新鮮味があり、ひと味違うドキドキを感じられる。同じ“列車”でも、作品によって展開や見せ場が異なるのも面白いところだ。

 こうして見ると、列車とは名バトルの宝庫といえるのではないだろうか。

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