2023年9月に催され、好評を博した「新幹線プロレス」をご存知だろうか。東海道新幹線「のぞみ」の細長い車内を舞台に、プロレスラーが大暴れ。現場は乗客の歓声で大いに盛り上がり、全国ニュースに取り上げられるなど話題になった。
列車内でのバトルが盛り上がるのは、漫画の世界でも同じだ。2020年に大ヒットした『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』はその筆頭だろう。狭い車内、高速で移動する戦場……独特な緊張感のある列車内での戦闘は、バトル漫画の定番といっても過言ではない。
そこで今回は、列車内で白熱のバトルをくり広げた漫画を紹介していこう。
■サンジの策が光る『ONE PIECE』海列車
尾田栄一郎氏が手掛ける『ONE PIECE』(集英社)でも、列車をテーマにしたバトルがあった。大海原を駆け抜ける「海列車 パッフィング・トム」を戦場とした、“麦わらの一味”と政府暗躍組織のニコ・ロビン争奪戦だ。
ロブ・ルッチらCP9に連行されたロビンを取り戻すため海列車に乗り込んだサンジは、列車ならではの戦いで敵を翻弄していく。
とくに爽快なのが、第5車両でサンジが提案した作戦だ。海兵の精鋭がひしめく第5車両を突破するのは容易ではない。そこでサンジは合流したフランキーやそげキングと協力して海兵を最後尾におびき寄せ、車両を切り離す策を決行する。作戦は見事に成功し、敵の戦力を大幅に削ってみせた。
列車の連結を外して戦力を分断するのは、列車バトルでは定石だ。足技だけでなく、頭脳プレイも得意とするサンジの本領発揮といえるだろう。海列車に乗り込んだのがルフィやゾロだったら、もっとシンプルな戦いになっていたかも?
■環境を利用したスタンドバトル『ジョジョの奇妙な冒険 5部』フィレンツェ行き超特急
次は、荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』第5部から、プロシュートおよびペッシ戦を見てみよう。
ボスの娘であるトリッシュ・ウナの護衛任務を受けたジョルノ・ジョバァーナは、仲間とともにフィレンツェ行きの列車に乗り込む。しかし、列車にはトリッシュを狙う暗殺者チームの刺客の姿もあった。
超特急の列車内でくり広げられる緊迫したスタンドバトルは、第5部のみならず『ジョジョ』シリーズのベストバトルに挙げる読者も多い。
“列車ならでは”に注目するなら、周囲の生物を老化させるスタンド「ザ・グレイトフル・デッド」を持つ暗殺者のプロシュートはとくに厄介だった。自分をあえて老化させて乗客に変装し、ミスタを奇襲するシーンは敵ながら「カッコいい!」と言わざるをえない。弟分のペッシをぶっきらぼうに励ます兄貴分な一面も含め、非常に魅力的な敵だった。
一方、ジョルノたちを束ねるチームリーダー・ブチャラティも負けていない。プロシュートに追い詰められたと思いきや、スタンド「スティッキィ・フィンガーズ」で外につながる窓を作り、自分もろともプロシュートを突き落とす作戦に打って出る。
時速150キロで走る列車から飛び降りれば、致命傷は免れない。ブチャラティの覚悟を示す「覚悟はいいか? オレはできてる」という名ゼリフが飛び出したのも、このシーンだ。
かたや乗客に変装しての奇襲、かたや相打ち覚悟の飛び降り。どちらも超特急の列車だからこその戦略だ。環境をも利用して死力を尽くしたこの戦いは、確かに『ジョジョ』シリーズ屈指の名バトルに違いない。