■天才子役が演じる圧巻のマヤ! 『ガラスの仮面』美内すずえさん

『花とゆめ』の名作を語るうえで外せないのが、美内すずえさんの『ガラスの仮面』だろう。1975年から連載が開始され、いまだ未完の本作は多くのファンの心を掴んで離さない。

 伝説の舞台『紅天女』を巡って、演劇において天性の才能を持つ少女・北島マヤと、幼いころから子役として活躍している姫川亜弓のライバル関係が主軸に描かれた本作。速水真澄や月影千草をはじめとした個性の強いキャラも続々と登場しており、世代ではなくとも作品を知っているという人も多いだろう。

 本作が実写化されたのは1997年のことだった。『家なき子』で“天才子役”としてその名を世に知らしめた安達祐実さんが主演を演じ、田辺誠一さんや野際陽子さんなどキャストも豪華だった。

 実写化では、当時15歳だった安達さんの存在感にひたすら驚かされた。天才女優と謳われる難しい役柄だったが、才能を感じる演技を存分に発揮していた。そしてなにより、月影役の野際さんが驚くほどハマり役で、ビジュアルの再現度だけではなく、往年の大女優という強烈なキャラクターを見事に自分のものにしていた。

 ファンの多い原作の実写化は、厳しい意見が寄せられることも多い。しかしドラマ版『ガラスの仮面』は、原作ファンも圧倒されるほどの威力を放っていたと言えるだろう。安達さんと野際さんのタッグを再び見ることはもう叶わないのだが、彼女たちの素晴らしい演技は多くの人の心に焼きついていることだろう。

 

 こうして振り返ってみると、『花とゆめ』の名作たちは今もなお多くのファンに愛されていることがわかる。そして熱意を持って実写化に挑んだ制作スタッフの尽力もあって、ファンも納得の実写作品に仕上がっていた。

 時の流れとともに別れはつきものだが、こうした名作たちをいつまでも覚えていたいと思う。

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