10月26日、『花とゆめ』(白泉社)で『花ざかりの君たちへ』や『シュガープリンセス』などを連載していた中条比紗也さんが病気のため亡くなったことが白泉社公式サイトにて発表された。多くの名作を生み出した『花とゆめ』のなかでも、とくに『花君(はなきみ)』は全巻集めるほど大好きだった筆者。実写ドラマでも楽しませてもらったことを昨日のことのように思い出す……。
なんとも悲しいニュースに触れた今、あらためて振り返ると『花とゆめ』には『花ざかりの君たちへ』をはじめ、実写化もヒットした名作が多い。そこで、今回は中条さんへの追悼の意も込め、実写ドラマ化も大成功した『花とゆめ』の名作をご紹介したい。
■イケメン俳優が目白押しだった『花ざかりの君たちへ』中条比紗也さん
1996年20号から連載が開始された『花ざかりの君たちへ』は、“男装した女子が男子高校へ潜入する”という少女漫画の王道テーマを描いた中条さんの名作だ。
主人公・芦屋瑞稀が憧れの陸上選手の佐野泉に会うため、性別を偽ってアメリカから日本の男子校へと編入する物語。登場する男子たちが総じてイケメンで、佐野をはじめ瑞稀に想いを寄せる中津秀一や、寮長の難波南など、さまざまなジャンルのイケメンキャラも見どころだった。読んでいた当時、“自分のタイプのキャラは誰か?”と、友達とよく語り合っていたものだ。
そんな本作は、2007年と2011年に実写ドラマ化を果たしているが、副題に「〜イケメン♂パラダイス〜」と名付けられるほど、旬なイケメン俳優が起用された。
1作目では、主人公・瑞稀を堀北真希さん、佐野を小栗旬さん、中津を生田斗真さんが演じ、ほかのキャストも水嶋ヒロさんや山本裕典さん、岡田将生さん……など、今考えると豪華すぎる面々が顔をそろえている。
また、校長役に松田聖子さん、教頭役に宇梶剛士さん、教師役に稲垣吾郎さん(特別出演)も登場しており、制作陣の熱の入れようがすさまじかったこのドラマ。なんといっても主演の堀北さんの男装姿がかわいすぎて、彼女に憧れてショートカットにした女子も多かったのではないかと思う。
そして、4年後にはリメイク版として、前田敦子さんを主演に再びドラマ化されるほど人気を博した。“学園漫画の金字塔”として世代を超えて語り継がれる『花君』。あらためて今、あのころを思い出しながら読み返したい。
■チョビの再現度がすごかった! 『動物のお医者さん』佐々木倫子さん
1988年1号から連載された、佐々木倫子さんの『動物のお医者さん』は、獣医師を志す主人公・西根公輝を中心としたH大学獣医学部の学生たちの物語だ。主人公の“ハムテル”こと公輝は、シベリアン・ハスキーの子犬“チョビ”と偶然出会い、獣医師を目指すことになる。
本作の見どころの一つは、この“チョビ”だった。険しい顔つきのため「般若」と揶揄されることもあるが、温厚で従順、とにかく“お利口さん”なチョビの愛らしさにノックアウトされた人も多いだろう。
2003年には吉沢悠さんを主演にむかえ、実写ドラマ化された。要潤さんや真矢みきさんなどのベテラン俳優たちが名を連ねており、愛らしい動物たちの登場に、心あたたまるストーリーが視聴者を夢中にさせた。
実写化において注目したいのは、チョビの再現度だ。先述したように、チョビといえば「般若」のような“強面”であることがチャームポイントなのだが、ドラマでは原作のチョビに酷似したシベリアン・ハスキーが登場している。この再現度の高さにはファンも驚き、「模様が同じー!」と多くの声が寄せられるほどだった。
作品において欠かせない存在のチョビだけに、確実な再現度で実写化できるようにここまで似た子犬を探し出すとは……制作陣の熱意を感じる作品だった。