■個人情報を平気で暴露する病院関係者『ハイティーン・ブギ』
『ハイティーン・ブギ』は、原作:後藤ゆきおさん、作画:牧野和子さんにより1977年から『プチコミック』(小学館)で連載された作品だ。主人公・宮下桃子は、成績優秀で真面目な女子高校生。そんな桃子に一目ぼれしたのが、暴走族リーダーの藤丸翔だ。数ある困難を乗り越えていく2人の青春群青劇となっている。
そんな本作にも、今では信じられないシーンがある。桃子はある事件をきっかけに妊娠してしまい、不安を抱えながら産婦人科へ出向いた。その様子を見ていた女暴走族の未樹は桃子が診察室を出たあとで女性医師に「あの宮下桃子さんのつきそいのものですが…桃子さん」と話しかける。すると医師は「あ 3か月めですよ」と、平然と答えてしまうのだ。
今なら患者のプライバシーを優先し、たとえ親族であっても医療関係者が患者の状態を答えることはないだろう。しかし昭和の時代は、親族と思われる人ならこのような質問に答えてしまう関係者もいたのかもしれない。
おせっかいが当たり前だった古き良き時代は、反対に言えばプライバシーがない時代だったとも言える。
昭和はいじめなども多かった時代なだけに、少女漫画の主人公たちがひどい目に遭わされることも少なくなかった。しかし、それに立ち向かっていく姿は素敵でカッコよく、時を経ても読者の心に深い印象を与えている。
今ではありえないと感じるシーンも多いが、当時の社会的な価値観や生活習慣が反映されたものでもあるだろう。漫画でスカッとしたいときや、歴史的な背景や文化の変遷に触れたいときは、昭和の少女漫画を読み直してみるのもおすすめだ。