ノスタルジックな雰囲気を持つ、昭和の少女漫画。その内容からは時代背景を読み取ることもでき、思わず懐かしさを感じる読者も多いだろう。しかし昭和に描かれた作品のなかには、令和の今だとかなり問題になってしまうのでは?と思えるシーンもたびたび見られる。「こんなことも平気でしていたの!?」今回は思わずそう叫びたくなる、昭和の少女漫画の信じられないシーンをいくつか紹介しよう。
■家が貧乏だから!?『ガラスの仮面』ビビ役を命じられたマヤ
言わずと知れた少女漫画の傑作『ガラスの仮面』は、美内すずえさんによって1975年から連載が続いている作品だ。演劇の天才少女・北島マヤの成長を描いた本作は今もなお絶大な人気を誇っているが、作品がはじまった当初は昭和ならではの展開が多く見られた。
その1つが、まだ中学生だったころのマヤのエピソードである。演劇が好きで、徐々にクラスメイトからも一目置かれるようになってきたマヤ。学校祭で舞台を演じることになり、周りの推薦もあってマヤは「椿姫」のような素敵な役を演じられるのではないかと期待する。
しかし先生から命じられた役は、国で一番みにくく、笑われ者でおばかさんのビビ役だった。そしてなんと先生は「古着でもなんでもつぎはぎのドレスをこしらえてきなさい ビビは貧しい娘の役だから」と言うのだ。
推測ではあるが、おそらく先生はマヤの家が貧乏だから、衣装代がかからないビビ役を命じたのだ。また、このエピソードではほかにも「和田くんなんか 死刑執行人にぴったり」と言うクラスメイトもおり、いじめにもつながりかねないようなビックリのセリフが飛び出している。
マヤの家が当時貧しかったのは事実かもしれないが、衣装代がかからないからといって、先生が役柄を決めてしまうのは問題だろう。ただし、望んだ役ではなかったものの、マヤはビビ役を一生懸命演じ、最終的に圧倒的な演技を見せて周りを感動させている。皮肉にもマヤにとってビビ役は、これから演劇の世界で生きていくことを決定づけた役となった。
■好きな女の子の個人情報をアレで特定 !?『ヤヌスの鏡』
宮脇明子さんの人気少女漫画『ヤヌスの鏡』は、1981年から『週刊セブンティーン』で連載された作品だ。
主人公は、優しい女子高校生の小沢裕美(ヒロミ)。日々祖母から規律の厳しい生活を強いられており、その反動から“ユミ”という不良少女の人格が形成されてしまい、多くの事件を起こしていくストーリーだ。
この作品でも、昭和ならではのシーンがあった。裕美に想いを寄せる生徒会長・進東健一は、夜の街で遊ぶユミ(裕美)を見つける。真面目な彼女が繁華街にいるわけがない……そう思った進藤はユミのあとをつけ、「小沢」という表札を確認。それでも、本当に裕美の家なのか確信を持ちたかった彼は電話ボックスへ。そこにあった電話帳で「小沢」という名前に電話を掛け、裕美の家を特定するのであった。
昭和の時代は個人宅や電話ボックスに電話帳が存在し、信じられないことに各家の電話番号や住所が掲載されていた。作中の進東もとくに悪びれる様子もなく電話帳で個人の家を特定していたが、昔はこのように電話帳で好きな人の連絡先を調べた人も多かったのかもしれない。
今では絶対的にプライバシーの問題になりそうだが、電話がおもな連絡手段だった昭和時代、電話帳の役割は良くも悪くも大きかったのだろう。