■作中最も愚かな行為「人間狩り」

『デビルマン』の蛮行で、作中最悪にして最凶の「人間狩り」は外せないだろう。政府は人間社会に紛れ込んでいた悪魔を一掃するために「悪魔特別捜査隊」を結成。また、雷沼教授は悪魔との戦争で捕らえたデーモンや、デビルマンとなった人間を使った実験・研究を行っていた。

 雷沼教授は、その研究成果を発表。その内容は、悪魔の正体は人間で、現代社会生活の不満が増大した結果、その不満を別の生物になることで満たそうとした、というトンチンカンなもの。

 雷沼教授の発言を受けて政府は、現代社会に不満を持つ人間は「悪魔」になる恐れがあるから、抹殺することとなった。そして、人類は「隣人も悪魔に変化しうる」という疑心暗鬼に陥り、人間が人間を殺すという結果になってしまった。中世ヨーロッパであった「魔女狩り」の愚かさを繰り返すこととなった。

 疑心暗鬼に陥った結果、世界中で戦争が勃発。悪魔狩りと称した人間狩りがはびこり、世界は荒廃しきってしまった。 

 結果、地球上にはデーモンたちとデビルマンたちが生き残り、人間は絶滅。地球の支配者顔でいた人間は、愚かな結末を迎えてしまった。

 漫画『デビルマン』は、終始暗くどんよりとした展開が続き、現代社会・現実世界に通ずる教訓めいたものを受け取らざるを得ない。「しょせんは、漫画の中の出来事」ではなく、現実にあってもおかしくないと教えてくれる名作だろう。

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